私の絵本体験記
「絵本フォーラム」48号(2006年09.10)より
「神様からの贈り物」
池田美佳さん(兵庫県宝塚市)

 出産後1年間の育児休暇を申請していた私は、息子・光希が1歳になったら職場に復帰するつもりでいた。しかし、息子のアトピー性皮膚炎が思うように回復せず、1歳の誕生日に、復帰しないことを決意した。当初想定していたより長期間、光希と一緒にいられると思うと、その期間、何かをしようという気になった。そんなとき、光希のアトピーと食事制限のため、少しでもいい母乳をとマッサージを頼んでいた助産師さんの紹介で、『ほるぷこども図書館』に出会った。

  アトピーで生まれてきたのはつらいけれど、神様がもう少し長くこの子とゆっくり過ごせる時間をプレゼントしてくれたのかもしれない。プレゼントされた時間を有効に使えたかどうかは自信がないし、いい絵本ばかりを読んで育てたわけでもない。息子はご多分に漏れずトーマス好きで、キャラクター絵本もたくさんある。夜眠る前に読み聞かせという話も聞くが、かゆがる背中をさすって何とか眠りにつかせるので、とても読みながら夢の中へというわけにもいかない。「これ読んでー」と絵本を選んできたときに、自由に読み聞かせる程度だ。しかし、息子を自転車に乗せて坂道を押していると、「うんとこよっしょ、えっしっしっ」と、『ちいちゃんとさんりんしゃ』そっくりのかけ声をかけてくれるとき、お気に入りの『ボリボン』をすらすらとそらんじているのを見るとき、確実に絵本のことばは心に響いていると感じる。その心の成長が、神様からの本当のプレゼントなのかもしれない。

 お散歩中の木立の中で、菜々「いたちかな」、私「しーっ、みつかったらたいへん。いたちは、ぼくらをたべるこわいやつ」と、抜き足差し足で歩きます。雨の日には、「あめあめぽったん、あめぽったん♪」。お風呂に入れば、「おふろでちゃぷちゃぷ。せっけんぶくぶく。あひるといっしょ。おふろ、なな、だーいすき!」と歌います。
 妊娠中にテレビ、新聞をやめてしまったので、世の中の出来事には疎いのですが、静かな部屋で過ごす育児は、絵本からの言葉の習得経過が手に取るようにわかり、また、かすかな鳥のさえずりや犬の鳴き声に目を輝かす様を見ているのはうれしいものでした。

 ほるぷフォーラムの絵本の世界が後押ししてくれるので、多様の情報に惑わされることなく、自信を持って母親業を務めています。その時その年齢で感じてほしいこと、知ってほしいこと、おもしろいこと、魅せられることがすべて詰まっている宝箱のような『ほるぷこども図書館』。
 娘が1歳半のころは、喜ぶので1日に70〜80冊も読んでいたのですが、2歳2カ月の今は、動きも活発になり外遊び中心で、寝る前に7〜8冊でしょうか。自分でページをめくってお話をつくっているときもあり、私の語り口をまねしていて、笑ってしまいます。
 どうぞ、「スペースがないから」「全部は必要ないと思う」「どうせ読まないから」なんて言わずに、お部屋に並べてみてください。きっと育児が楽しくなりますよ!

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