えほん育児日記
〜絵本フォーラム第127号(2019年11.10)より〜

『絵本でつながり広がった世界』

 竹之下 和美(絵本講師)

竹之下 和美 我が家の息子たちのお気に入りの絵本の中に『おしいれのぽうけん』 (古田足日/作、田畑精一 /挿絵、童心社) という絵本があります。 子どもたちの好きな絵本を読む、寝る前の絵本タイムでいつも読んでいた絵本の一つです。

 いたずら盛りの息子たちにとつて、お話の中に出てくる「ねずみばあさん」と押入れが特別なものであり、長男にとつては特に怖くもあり今でも心の中に残つているお話のようです。彼が甥つ子たちに話をしているのを目にすると、微笑ましく、絵本で子育てすることで共有できる時問が親子にとつても楽しく幸せな時問であり、毎日少しずつの積み重ねによつて絵本でつながつていることに喜ぴを感じます。

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 さらに、私が絵本とのつながりを深めたのが、現在活動を続けている人形劇を通してです。人形劇は、親子で一緒に同じ空聞で共有体験してもらえるように生の舞台を大切にして活動を続けているもので、その人形劇を子ども病院に届ける機会がありました。べッドから離れられないでいる子どもたちにも、もつと身近に楽しみを届けられたらと病院での「おはなし会」を始めました。

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 病院での「おはなし会 」では個々の病室に出向いて絵本を読むこともあり、子どもたちにより身近にお話を届けることが出来ます。

 病院という限られた空問の中で長期間過ごしている子どもたちは、外の世界と中々触れ合えないので、色々な絵本を通して間接体験を楽しむ手助けをしたいと思つています。季節感を感じられる絵本を中心にナンセンス絵本や参加型絵本、うた絵本、そして主人公と共有体験できる物語絵本など様々な工夫を凝らして病院での「おはなし会」に取り組んでいます。

 この「おはなし会」で、子どもたちに付き添つているご家族にも、絵本に触れるひと時が、心がホッとできる時問になつてほしいと思つています。そして、読み聞かせを通して、ご家族の方自身の声を子どもたちの心に届けてほしいと願つています。こうして 「おはなし会」を通して絵本でのつながりが広がつて<ると、私自身、絵本を届けるために絵本についてもつと知りたいと思いました。 そんな時に出会つたのが「絵本講師養成講坐」でした。一つひとつの課題に時問をかけてじつくりと向き合い、自分の絵本に対する思いを深め、絵本の力・生の声を届ける素晴らしさを再確認できました。

 晴れて絵本講師となって新たな出会いの場となつたのが、子育て支援のひろばでの「おはなし会」です。 この場所は、人形劇をしている私にとつてとても馴染みのある場所であり、子育て中の家族に向けて絵本で子育てする楽しさを少しずつ伝えていく機会に出会えたと思いました。「おはなし会」に参加される方々に、先ずは読んでもらうことの心地よさを体験してもらつて、愛情のこもった声による言葉が心を育てることを知つていただけたらと思います。

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 「おはなし会」を通して、子どもたちには読んでもらうことの喜ぴや、たくさんの絵本と出会つて色々な世界を知つてもらい、親友となれる絵本をみつけてほしいと思います。 また絵本講坐を通して子育て中の家族や、立場は違つても子どもとかかわる機会のある人たちに、もっと親や大人が子どもに愛を伝えることのできる絵本、親子の絆を強めるのに力を貸してくれる絵本について紹介しながら、絵本の持つ可能性について少しずつ伝えていけたらと思います。

 何より、絵本でつながり広がつた「おはなし会」や人形劇で出会つたキラキラした目の子どもたちとの、この瞬問を大切にして活動を続けていきたいと思つています。

(たけのした.かずみ)

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