私の絵本体験記

「絵本フォーラム」125号(2019年07.10)より

「家族をつなぐ絵本の時間」

 坂田 紀子 (大阪府)

さかた のりこ「4冊までよ」。幼い頃、母にこう言われて寝室に持って行った絵本を、布団で読んでもらうのが、私にはとても楽しい時間でした。  

 その思い出のおかげか、妊娠中期には絵本を購入し、お腹の子どもに読み聞かせを始めました。そして、息子が生まれて3ヶ月ほど経った頃でしょうか。実家から数箱の重いみかん箱が届きました。開けてみると、なかから私が幼い頃読んだ絵本がたくさん出てきました。さらに、「月刊 こどものとも012」(福音館書店)が毎月息子宛に届くようになりました。こうして、息子と私、そして遠方の祖父母をつなぐ読み聞かせが始まりました。

 そんな生活も5年後に双子の娘たちが生まれると一転しました。娘が、年間数十日入院して過ごす生活が数年間続きました。我が家の読み聞かせは、病院の面会時間と、私に余力がある日だけという、私が理想としていた絵本の時間とは全く違うものになってしまいました。

 そして今……。休日には台所から、中学生の息子と小学生の娘たちの声が聞こえてきます。「たまごを ひとつ ふたつ みっつ」「しろくまちゃんみたいに落としちゃだめだからね」それは、それぞれの子どもと何度も読んだ絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)のなかのせりふです。理想通りではなくても、子どもたちの生活には絵本が入っていて、別々に読んだ絵本も兄妹の思い出として共有されているのだなあと感じながら、私の読み聞かせは続きます。
(さかた・のりこ)

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