私の絵本体験記

「絵本フォーラム」123号(2019年03.10)より

「いつも変わらない その姿で」

 小川 素子  (大阪府)

いつも変わらない その姿で 「うんとこちょ どっこいちょ まだまだかぶは、ねけまちぇん」。何やら可愛らしい声が聞こえ、リビングのドアを開けると、2歳を過ぎた娘がソファーで絵本を広げ、読んでいる姿が目に入ってきました。その可愛らしい姿と言ったら……。もう、9年も前のことなのに、今でも鮮明に覚えています。

 そんな娘は今年で11歳。思い返せば、私の子育てに絵本はいつも強い味方になってくれました。娘に対し、なかなか素直に言葉で思いを伝える事が出来なかった時、『かみさまからの おくりもの』(こぐま社)が娘と私の距離をそっと縮めてくれました。弟が産まれ、癇癪を起こすようになった時、『ねえ だっこして』(金の星社)が、見事に娘の気持ちを教えてくれました。会話が出来るようになった時、『うずらちゃんのかくれんぼ』( 福音館書店)で、「もういいかい まあだだよ」と何度掛け合ったか分かりません。

 子どもが小さい時、寝かしつける30分ほどの時間が、私にとっては大好きな時間でした。夏場だと、まだ少し明るさが残る時間から3人で転がって、幼稚園での話を聞いたり、絵本を読んだり、時には弟を寝かしつける子守唄を一緒に歌ったり。今でも大切な思い出です。

 今は昔のように、”川の字”になって読む時間は少なくなりましたが、今度はソファーで、”山の字”になって、「今日は何読もうかな?」。そんな会話が、いつまでも続いていくといいなと思います。 絵本はいつも、何十年後も、色や形を変えず、そこにいてくれるから。
(おがわ・もとこ)

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