私の絵本体験記

「絵本フォーラム」115号(2017年11.10)より

「子どもにとって絵本との出会いとは…」

森田 裕美 (神奈川県横須賀市)

森田裕美 子どもにとって絵本との出会いとは 長男に初めて絵本を読んだときのことをはっきり覚えている。選んだ絵本は『おひさま あはは』(前川かずお/著 こぐま社)。冬生まれの彼がまだ寝返りもしない頃、暖かな春の陽気を感じながら絵本を読み聞かせた。むろん寝ながらである。今考えると私の暇つぶしだったかもしれないが、彼は黄色を基調としたあたたかな絵を、見え始めたばかりの目でしかと見つめ、はふはふ言いながら一緒に楽しんでいたように思う。

 その長男も3歳、幼稚園の年少さんになった。弟の誕生という彼にとっての大事件も絵本で乗り越え、現在は弟とともに毎日のように絵本を楽しんでいる。

 私は、長男の幼稚園入園をきっかけに、ちょっと冒険してもらおうと、『三びきのやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン/え せたていじ/やく 福音館書店)を読み聞かせた。実はこの絵本、私も幼少期に読んでもらった記憶があるものの、自分では二度と開かなかった。トロルが怖かったのだ。さて、長男はどうなるかと、親としては反応を楽しみにしていた。そして彼はいつも通り私の膝に座り、初めて読む絵本にわくわくしていたが、読み終えたときは、目に溜めた涙をぐっとこらえ唇を噛みしめていたのである。私は、そんな長男をますます愛しく思うと同時に、これからもっといろいろな冒険、心を動かす経験をさせてあげたいと思ったのである。しかし、さすが私の息子である。今のところ、二度とこの絵本を開こうとしない。

(もりた ひろみ)


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