私の絵本体験記

「絵本フォーラム」115号(2017年11.10)より

「心と心のつながり」

三宅 彩 (岡山県倉敷市)

三宅彩 心と心のつながり 幼い頃の記憶には母の声があります。保育士だった母は、時間をやり繰りしてたくさんの絵本を私に読んでくれました。週末になると図書館に行き紙芝居を一緒に見たり、寝る前には部屋を暗くして、母が話す昔ばなしを聞きながら眠りについたりしました。

 私は中学生になるとほとんど本を読まなくなっていました。母との記憶が鮮明に蘇ってきたのは、娘を出産してからでした。産後2ヶ月の頃、市の保健師訪問を受け、ファーストブック事業の一環として絵本をいただきました。母との記憶から「絵本は良い」という漠然とした印象をもっていた私はそのことをきっかけに、「絵本で子育て」することを意識するようになりました。

  インターネットを開けば絵本に関する様ざまな情報が手に入りますが、もっと本質的なところを知りたいと思い「絵本講師・養成講座」を受講しました。『心と心のつながり』という点で、母に対する絶対的な信頼は幼いころの体験からきているのだと、心から納得できました。

 これから2歳の誕生日を迎えようとする娘にとって、絵本がどのような存在になるかはわかりません。ただ、今は娘が寝る前に選んでもってくる絵本を読み聞かせる穏やかな時間を大切にしたいと思います。私にとって至福の時間です。

  母はたくさんの絵本を人に譲り、実家には母の特にお気に入りの絵本が少しだけ残っています。それらの絵本は、私にとっても大切なたからものです。いつか娘にも読んであげたいなぁ、と密かな楽しみです。

(みやけ・あや)


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