私の絵本体験記

「絵本フォーラム」113号(2017年07.10)より

「絵本の読み聞かせで幸せいっぱいに」

多本 ゆき枝 (大阪府茨木市)

絵本の読み聞かせで幸せいっぱいに ダウン症を持つ娘の発語について不安に思っていた時、絵本の読み聞かせがことば育てになると知りました。生後5ヶ月から、一日10回とノルマを決め、使命感に燃えて絵本の読み聞かせを始めたのです。

 娘がちゃんとお話を楽しんでいると分かるようになったころ、肩の力が抜けて絵本を楽しむ余裕が出てきました。そして、絵本が私に語りかけてくることにも気がつきました。優しい絵に魅かれて買った『どこまでも』(アンナ・ピンヤタロ/さく、たわら まち/やく、主婦の友社)を読むたびに、《あらしが きても だいじょうぶ。》《ゆうきを もって すすみましょう。》と励まされます。娘としっかり手をつないで、一緒にいろんな体験を楽しみながら歩めば大丈夫、と思えました。

 娘のためにと始めた読み聞かせは、実は私のためにもなっていました。娘の成長が感じられると同時に、二人の弟をもつ私が、子ども時代に充分味わえなかった母子二人きりの濃密な時間を娘からもらっていたのです。娘を膝に乗せて絵本を読んでいると、なんともいえない満ち足りた気持ちになりました。

 今は、小学4年生になった娘と二人並んで座り、一緒に絵本を楽しんでいます。ホットケーキを食べるときに「ちびくろ・さんぼは169枚も食べたなんてすごいね。でも、トラのバターは臭いからイヤだね」なんて言って笑い合えるのも、共通の絵本体験があってこそ。「絵本で子育てすると幸せいっぱい。楽しいですよ」、と多くの人に伝えていきたいです。
(たもと・ゆきえ)


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