えほん育児日記

   
わたしの子育ては・・・


~絵本フォーラム第112号(2017年05.10)より~  第6回

 娘は14歳、高校受験の年だ。絵本で子育てをしていると勉強ができるという人もいるが、娘はずっと普通の成績だった。中学生になり、成績が落ちた。今の悩みは、娘が勉強しないことだ。中学1年の時は、「高校に行かない」と言いだした。「じゃあ、どうするの?」と 聞くと、「家にずっといる」と言う。いきなりのニート宣言だ。

私の子育て6 娘は14歳 中学2年になると、高校へは行ったほうがいいと思い始めたようだが、相変わらず勉強をしない。私も一緒に勉強を始めた。中学生にもなって一人で勉強できないなんて、ほっておけばよい、など色々な意見があるだろう。でも、嫌がらないので、一緒に勉強をしてきたが、成績はあがらない。塾に行き始めても、あがらない。本人にやる気がないからだ。

 塾を変えてみた。そこで出会った先生から、中卒の現実と高校入試の実態を聞き、このままではいけないと、やっとスイッチがはいったようだ。思春期だから、親の言うことには反発する。塾の先生との出会いで、また子育てを助けてもらった。

 この連載を書くために、自分がどんな子育てをしてきたのかを振り返ることは、苦しい作業でもあったが、自分のしてきたことを文章にして形にできたことは、客観的にみることができ、自分を認める〈受け入れる〉作業だった。苦しかったことも楽しかったことも、できなかったことも、受け入れるということは、本当に大切だと思う。本当にいろんな人に助けられ、支えられて、ここまでくることができた。

  娘が成人するまであと6年。これからも色々なことがあるだろう。NPO法人「絵本で子育て」センターの藤井勇市顧問が、「子どもは親の言うことをきくのではなく、親の行動を真似する」と講座で話されていた。子どもは親の背中を見て育つ。子どもに、幸せになってもらいたいなら、自分が幸せでいればよい。子どもに夢を持ってほしいなら、自分が夢を持てばよい。

 自分がやりたいことはなんだろう? 好きなものは何か? それはずっと本だった。子どもが生まれてから、絵本に再び出会い、子育て中に唯一続けられたことが絵本を読むことだった。だから、絵本の勉強をしようと「絵本講師・養成講座」を受講した。絵本について学びたかっただけで、自分が講師になるとは思わなかった。友人にも、私が講師だなんて信じられないと言われる。私も同感だ。人前で話すことが苦手な私が、先生や仲間に励まされ、人前で話す機会をいただいた。お腹が痛くなりながら、娘に「どうしよ~」と泣きつくと「先生は、お母さんができると思うから、お母さんに依頼したんだから、大丈夫だよ」と言ってくれた。家で講座の練習をすれば、つきあってくれた。そして、講座当日には「頑張れ! 」というメッセージをくれる。ラジオに電話出演する時、娘には聞かれたくなかったが、私が何をしているかを知ってもらういい機会なので、聞いてもらった。「お母さん、声が暗い。もっと相手の言葉を聞いて話したほうがいい」とアドバイスをくれる。私の相談相手に乗ってくれる頼もしい娘と成長してくれた。

 最近は、娘と絵本を読むことはなくなってしまった。寂しいけれども、今度は違う絵本の楽しみがあ子育ては自分育て 絵本「ボルカはねなしガチョウのぼうけん」る。2歳の姪に、「どの絵本がよいか? 」と、娘と話し合う時間は、とても楽しい。先日、「今好きな絵本はどれ?」と娘に聞いてみた。いろいろな絵本のタイトルをあげてくれた。どれも私も好きな絵本だし、一緒に読んできた絵本だ。でも、その中の1冊は、娘と読んだのは1回で、図書館で借りた絵本だった。その後、私がどうしても手元に置きたくて買っておいた絵本を、最近一人で読んだらしい。その絵本は『ボルカ はねなしガチョウのぼうけん』(ジョン・バーニンガム/作、木島始/訳、ほるぷ出版)。これからの娘の人生、色々あるだろうけど、ボルカのようにありのままの自分を受け入れてくれる仲間にであって、娘が幸せだと思える人生を歩んでほしいと思う。私も娘に胸をはって、「私は幸せだ!」といえる人生を、歩んでいこう!

 1年間読んでくださり、ありがとうございました。
 (なかた・ともこ)

 

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