絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」111号

2017.03.10

『絵本講師・養成講座』を受講して


伝えたい……「絵本っていいな」という思い

大西 真葵(芦屋13期生)

おおにし まき 私には8歳と5歳の子どもがいます。読み聞かせを始めてからもうすぐ9年になります。私自身、母にたくさんの絵本を読んでもらって育ったので、子どもにも同じように絵本を読んであげたいと思い、細々とでしたが絵本のある生活を送ってきました。

  息子が3歳のときに娘が誕生。すると兄が自然と妹に絵本を読んでくれるようになりました。まだ赤ちゃんだとはいえ、妹も2ヵ月近くになると絵本を目で追い、声のする兄の方を見、反応を見せるように。そんな二人の姿に感動し、絵本の力を感じたことで、絵本で子育てをしたいと思うようになりました。

 その後、息子が通い始めた幼稚園の絵本サークルに入会し、図書館のお話講座に参加する機会もでき、小学校の読み聞かせサークルにも誘ってもらい……と絵本とかかわるうちに、気がつけばリビングの本棚には絵本がぎっしり。「今日の絵本タイムは何読もう?」と 本棚から選べる環境になっていきました。私自身が読み聞かせに充実感を覚えるようになり、絵本タイムが日課になってから5年が経ちました。

 3年前に、友人から「絵本講師・養成講座」のことを教えてもらいました。2ヵ月に1回芦屋で受講し、毎回リポートを提出。絵本講師になったら絵本講座ができるということまでは聞いていたのですが、そのときには絵本に関する資格があることを新鮮に感じただけで、自分には遠い世界の話だと思っていました。

 ところが、絵本タイムを楽しみ、絵本の魅力をどんどん感じていく中で、絵本について一度しっかり学びたいと強く思うようになり、ついに「絵本講師・養成講座」を受講したいと思うようになったのです。そのままの勢いで夫に相談すると、快く賛成してくれ、一歩を踏み出したのでした。

 開講式の日まではワクワクよりもドキドキが大きく、芦屋までの電車の切符がどうしても買えない夢まで見ました。愛媛から電車と新幹線を乗り継ぎ、片道3時間。完璧なおのぼりさんで会場に着いたときには、ほっとする間もなく次の緊張が待っていて……。終わるころにはぐったりでしたが、充実感いっぱいで帰りの電車に乗ったのをよく覚えています。

 毎回、想像以上の学びがあり、自分の意識が大きく変わったと感じます。1編、2編……と講座が進み、課題リポートに取り組んでいく中で、絵本の力や言葉の力について深く学び、これまでは何となく感じていた絵本の素晴らしさを再認識し、絵本の力を確信できました。また、読み聞かせの向こうにある心の交流の素晴らしさと大切さをひしひしと感じ、実際に私も、絵本を通した子どもたちとのかかわり合いの中で培ってきた、つながりのようなものに支えられていることにも気づきました。

 最初は絵本について学べるというだけでウキウキ・ワクワクし、満足していたのですが、途中から「絵本っていいな」という思いを誰かに伝えたいと思うようになっていきました。自分が日々感じている読み聞かせの楽しさを、絵本のよさを、自分なりの言葉で表現し、少しでも多くの子育て中のお母さん・お父さん方に、知ってもらえたらいいなと思っています。

 この一年、「お母さん、次の絵本の勉強会っていつなん?」 「リポートできた? がんばって!」、と私のやっていることに興味を示し応援してくれた子どもたち。自分の考えをうまく言葉で表現できずに悶々としながらリポートに向かう私を黙って見守り、講座の日には休みを取り、子どもたちと三人で楽しい一日を過ごせるようにと工夫し、快く私を見送ってくれた夫。家族の理解と協力、応援のおかげでがんばってこられたと感謝しています。

 ここにきてもまだ尻込みしてしまいそうな私ですが、ようやく立てたスタートライン。これまでの学びをさらに深め、「いい絵本講師とは何かを考え続ける人。それがいい絵本講師の十分条件」という専任講師の藤井勇市先生の言葉をしっかり心に留めて、最初の一歩を勇気を持って踏み出したいと思います。
(おおにし・まき)


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