絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」105号・2016.03.10

『絵本講師・養成講座』を受講して
—— あたらしい わたしの はじまりの日 ——

熊谷 桂子(芦屋12期)

熊谷 桂子 芦屋12期

 私は子どもたちが通う小学校で読み聞かせボランティアをしています。そして今、6年生へ向けての卒業読み聞かせとして、いつもの朝の15分の読み聞かせでは出来ないことをしようと、合奏や合唱を取り入れたプログラムを企画しました。大切な授業時間をいただくことになったので、最後の読み聞かせを六年生の子どもたちに楽しんでもらえるよう本番を一週間後に控え、仲間と一緒に練習をしている真っ最中です。

  そんな私が絵本講師という方に初めて出会ったのは、この読み聞かせボランティアに所属して間もない4年半ほど前。小学校で行われた保護者向けの絵本講座でした。この絵本講師の先生に、絵本の楽しさや大切さを教えていただき感動しました。そして、私は絵本講座をもう少し小さい子どもを持つ保護者の方に聴いてもらいたいという気持ちになりました。

  そして、2年後。私の子どもが通う幼稚園で絵本講座を企画し開催しました。この時の絵本講師の先生は、他県から遠路はるばる来て下さり、絵本のことは勿論ですが、いっぱいいっぱい、愛を語ってくださいました。その先生のお話を聴き、涙を流される保護者の方もいるほどの心温まる素敵な講座で、私は企画して本当に良かったと思いました。それと同時に、絵本講師とは、どんな勉強をされているのだろうと興味を持ちました。

  それから、また2年の月日を経て、私は念願の「絵本講師・養成講座」を受講することになりました。初めての受講日は、私はワクワクと胸を弾ませ、「何を教えてもらえるんだろう?」と習うという気持ちで行ったのですが、いざ蓋をあけてみると、思っていたものとは違い、自分で考え、学んでいくという自主的に行動をしていかなければならないことを知り、驚きました。

  毎回の講座で、講師陣の先生方のお話に、頭と心に強い感動と衝撃を受け、時には自分自身のことを振り返り、落ち込んだり反省したり、ということもありました。グループワークでは、いまの子どもたちの生活環境についてなどを真剣に話し合ったり、知らない絵本の紹介をしていただいたり、ととても楽しく充実した時間を過ごせました。

  また課題は、今まで自分の考えを文章にしたことがあまりなかったので、毎回、苦戦をしました。学生時代に国語の勉強や読書をもっとしておけばよかった、とこれほど後悔したことはありませんでした。しかし、自分の気持ちを言葉にできないもどかしさは、自分自身に真正面から向き合う時間でもあり、今までに余り考えてこなかった事を考え、悩んだ受講期間は、私のこれからの人生の糧になっていくことと思います。

  この講座を受け、ただの絵本好きが、世界平和を強く願う主婦に変わりました。これからの私に何が出来るのか、まだ分かりません。しかし、読み聞かせに対する姿勢は変わりました。この経験を活かし、これからも読み聞かせボランティアとして、活動は続けていきたいと思っています。

  ここからが本当の意味での自分の学びの始まり。卒業読み聞かせで、6年生の子どもたちに読む絵本の中の一冊に『はじまりの日』(ボブ・ディラン/作、ポール・ロジャース/絵、アーサー・ビナード/訳、岩崎書店)があります。子どもたちにエールを送ると同時に自分に向けても読み聞かせをしたいと思っています。

  今回、この講座を受講して、講師の方々、「絵本で子育て」センターの先生や絵本講師の皆様に心より感謝申し上げます。

そして、何よりこの講座に参加することに理解をし、課題提出を応援してくれた、夫と子どもたちに感謝の気持ちでいっぱいです。
(くまがい・けいこ)

 


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