私の絵本体験記

「絵本フォーラム」103号(2015年11.10)より

受け継がれていく体験、そして思い

森岡 光江(広島県呉市)

  私の絵本体験は、母が読んでくれた『安寿と厨子王』『鉢袈づき姫』などです。鮮やかな絵が目の奥に残っております。

私の絵本体験記 森岡 光江  そんな体験が深層にあったからかもしれません。三男一女の子どもたちが通っていた幼稚園が絵本教育に熱心で、今思うとえらい先生方を講師に迎えて講演会を開かれていました。それで絵本の世界に深く関わるようになった気がします。『クシュラの奇跡』(ドロシー・バトラー)、『やぎのしずか』(田島征三)、『ぐりとぐら』(なかがわりえこ)、『島ひきおに』(山下明生)。子どもたちが幼稚園・小学生時代は毎日4冊を15年間以上、一緒に楽しみながら読んでいたと思います。

 次男が高校2年生の時ニュージャージーに一年留学しました。7月後半に出発、9月の半ば荷物と手紙が届きました。「お母さん誕生日おめでとう。いつも読んでくれていた好きな絵本の原書を本屋で2冊見つけました。僕が日本に帰った時もまだスープがホカホカとあたたかかったらいいな」。我が家のおふくろの味は、テールスープなのです。

 さあ何の絵本か分かりますか? そうモーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』です。もう一冊『ラブユーフォーエバー』。 「この子は、今ホームシックなんだ。このように表現行動することで乗り切っているのだね」、と我が子が逞しく育っている事を実感しました。

 息子たちもそれぞれ父親になり、みな3人の子持ちですが、絵本を読んで楽しんでいるようです。(もりおか・みつえ)

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