私の絵本体験記

「絵本フォーラム」102号(2015年09.10)より

葉っぱのフレディだった息子

深澤 忠士さん(東京都町田市)

深澤 忠士さん体験記 私の息子は出生2日目に二分脊椎の手術を受けました。手術後医師から、「一生歩けない。5歳まで生きられればいいでしょう」と宣告されました。しかし、その後も数々の手術を耐え抜き、20年間の人工透析の末今年4月に多臓器不全で46年の生涯を閉じました。この間常々医師に、「この子はいつ何があってもおかしくないですよ」と言われていましたが、元気で、よく冗談を言って皆を笑わせ、学校でも通所施設でも人気者でした。

  今から10年くらい前、『葉っぱのフレディ -いのちの旅-』(レオ・バスカーリア/作、島田光雄/絵、みらいなな/訳、童話屋)に出合い早速息子に買い与えました。でも、一度は読んでいるはずですが感想を聞くこともなく私自身この本のことをすっかり忘れていました。葉っぱのフレディは春大樹の葉として生まれ、たくさんの他者(他の葉や木の下に集う人々)と影響しあいながら成長し冬を迎え冷たい風に乗って木から離れます。「痛くもなくこわくもありませんでした」、とフレディは言う。そして土に溶け込んで木を育てる力になるのです。

 「いのち」というのは永遠に生きているのだということを伝える絵本だと思います。私は、葉っぱのフレディを息子に置き換え、笑みを湛えた息子の死に顔を思いながら涙を流して何度も何度も読んでいます。一日も早く息子の死を受け入れられる日が来るように。

  この本は、息子のためではなく私のための本でした。『ハナミズキのみち』(淺沼ミキ子/文、黒井健/絵、金の星社)、『なみだ』(細谷亮太/文、永井泰子/絵、ドン・ボスコ社)にも助けられています。

(ふかさわ ただし)


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