えほん育児日記

わたしの子育て   

~絵本フォーラム第101号(2015年07.10)より~  第1回

まほちゃん1

 「♪二さいになったくりもとまほちゃんひとからいわれるのがだいきらい。なんでもじぶんでするんだよおもうとおりするんだよ。しょくじもきがえもあいさつも。これぞまさしくイヤイヤ期~♪」

 娘が二歳になった頃、私はこんな歌を口ずさんでいました。あるクリスマスソングの替え歌になっているのですが、こんな歌を作って家事の合間にでもこっそり歌わないと、気持ちがどうにもおさまらない、そんな時期もありました。

 

 そんな娘も、四月から小学1年生です。イヤイヤ期なんて過去の話……と言いたいところですが、私たちの生活は相変わらずです。相撲に例えるなら何でも全力でぶつかっていく娘、そんな娘に押し切られそうになりながらも、土俵際で踏ん張るお母さんの私、行司はお父さん。そんな三人家族です。これから、私たち家族の子育ての日々を綴っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


 さて、私には、ずっと大切にしている本が一冊あります。『子どもへのまなざし』(佐々木正美/著、山脇百合子/画、福音館書店)です。学生時代に購入して以来、人生の節目で、私の指針となってくれた1冊です。教育実習や卒業論文に悩んだとき、保育士だった頃、そして今も、いつもやさしい語りかけで、私を励まし導いてくれるのです。

  子育てに際し、私が一番大切にしようと心掛けてきたのは、この本にあった「子どもの望んだことを望んだとおり満たしてあげる」ことでした。「そんなことないで!」と娘につっこまれそうですし、実際のところ、どれほどできていたのかもわかりませんが……。


 娘が小さい頃の望みと言えば、もう「外で遊ぶこと」でしたから、それにはとことん付き合いました。まほちゃん2毎朝、玄関で帽子をかぶって公園へ出かけるのを待っている娘。そうやって、自分から行こうとせがむのに、「靴、イヤ!」「ベビーカー、イヤ!歩く!(と言うものの、すぐ抱っこ!)」とイヤイヤの嵐。それでも、子どもは存分に遊ぶのが一番と考えていましたし、毎日外で思いっきり遊び、成長していく娘の姿に目を細めていました。その一方で、脳裏には、朝食の食器が片付けられないままの台所がよぎり、ため息をつくことも……。「今日は公園には行かないよ」と言って家で過ごせたら、ひとりで遊んでくれたら、どんなに家事がはかどるだろう。そう思う気持ちに蓋をして、大人の都合で子どもに余計な我慢はさせないぞと、自分を奮い立たせていました。でもふっと、自分だけが我慢しているような気になり、公園やスーパーで見かけるよその子は、みんな聞き分けの良い子に見えてきます。片や、娘は納得しないと公園から帰らないし、買い物は退屈だと嫌がって泣くので連れていけない。パズルや折り紙をするとかんしゃくを起こすし、私には絶対に謝らない。このまま大きくなって、ちゃんと社会の中でやっていけるのだろうか、少しは我慢することも経験させた方が良いのでは……。自分の中から湧き上がってくる様々な気持ちと戦いながら日々過ごしていました。  

 それが今、ふと気が付いたら、雨の日には公園に行こうとは言わないようになりました。「もう帰ろう」と言ったら、「しゃあないな~」と私の都合も勘案してくれるようになりました。買い物にもしぶしぶ付き合ってくれるようになりました。怒られたら、最後に泣きながら謝るようになりました。一輪車に乗れるようになりたくて、ひとりで練習を重ね、さくら組で1番に乗れるようになりました。小学校の授業参観では、静かに先生の話を聞く娘の姿がありました。  


 みんな出来るようになりました。これが、本にあった「できるようになる時期は自分で決めればいいんだよ」と子どもの育ちを待つことの大切さなのだと実感します。おおらかに待ってはやれなかったし、まだまだ右往左往することも多いけれど、『子どもへのまなざし』や、そして何より、主人と手を携えながら、私の子育ての日々は、今日も続きます。 


(くりもと・ゆうか)

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