リレー

好奇心全開!
宇野眞理子

宇野真理子  「先生! 霜柱について調べたい」。私の勤務する小学校の図書室に一年生数人が飛び込んできました。私も久しぶりに耳にするワード、霜柱!

  「みんな霜柱って見たことあるの?」「うん! 今、休み時間校庭の隅で見つけた」「踏んだらバリって音がした!」やや興奮気味の一年生です。私も図書室内をぐるりと見渡し霜柱の本を探しました。そこで手にしたのが、福音館書店の、かがくのとも傑作集―どきどきしぜん『しもばしら』(野坂勇作/さく)です。「あったあ!」と表紙を見せると、「やったあ!」と嬉しそう。実は私も初めて開きます。

しもばしら  一冊の本を中心に頭がワッと集まりました。そこにはいきなり霜柱の説明から入るのではなく、おばあちゃんと孫の男の子の日常会話から始まっていました。さらに霜柱はどうしてできるのかという疑問から霜柱探検に出かけるという展開で、わかりやすい絵が描かれていました。幼い子どもたちの、疑問に絵がこたえてくれます。さらに、おばあちゃんと孫の会話を通し、霜柱は寒い夜の間にできることもわかりました。私自身が子ども達と一緒に、なるほど、と新鮮な感覚でページをめくっていくという感じでした。さらに目を見張ったのは、《霜柱を作ってみよう》と家庭の冷蔵庫の冷凍室を使っての霜柱の作り方が出ていました。「霜柱って作れるんだあ」と子ども達はさらに興奮状態。私は作り方を印刷してあげることを約束して休み時間が終わりました。

 これまで一年生には楽しい絵本、学校行事に合わせた絵本などを中心に読み聞かせてきましたが、子ども達の生の声から選ばれたかがく絵本。子ども達の興味関心を深めてくれた新しい本との出会いでした。

  質問に訪れた子どもの分だけではなく学年分印刷、配布してみると実際、家庭の協力もあって、霜柱を作り、観察記録を嬉しそうに見せにきてくれた子もいました。子どもの好奇心を受け止め、大人も一緒に学べるかがく絵本、視野が本当に広がりました。最終ページには《霜柱、作ってみよう! 踏んでみよう!》と武田一夫先生が書き加えてくださっています。

しもばしら その後、2014年12月に岩崎書店より、『しもばしら』(伊地知英信/文、細島雅代/写真)が出版されました。美しい自然の写真とともに色々な霜柱の姿に出会え、さらに、《たのしい実験》として写真つきで《しもばしらをつくろう!》が掲載されています。

  好奇心全開の子ども達に手ごたえのあった新しいジャンルの本でした。

 

(うの・まりこ)

絵本フォーラム101号(2015年07.10)より

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