絵本のちから 過本の可能性
★特別編★
「絵本フォーラム」30号・2003.09.10

奥田 継夫(おくだつぐお)氏 略歴

 1934年大阪生まれ。集団疎開を描いた『ボクちゃんの戦場』で鮮烈デビュー。後にマンガ化、絵本化、映画化され、ベルリン映画祭で評判となる。評論、エッセー多数。梅花女子大学講師。
21世紀に残したい絵本の本
奥田 継夫(児童文学者)
あなたの残したい絵本は?

 新しい世紀が始まって3年がたった。NHKでは〈あなたが選ぶ時代の歌〉を募集しだした。そこには20世紀を一つの“時代”として捉え直して、21世紀に橋渡ししようとする意図がある。絵本界にこの意図はまだないのか?
 20世紀後半には、児文協が編んだ『日本の絵本100選』(偕成社81年刊)、日本子どもの本研究会が編んだ『子どもと絵本の学校』(ほるぷ出版88年刊)他、正置友子の『絵本の散歩道(5巻)』(創元社82年〜94年刊)、今江祥智の『絵本の新世界』(大和書房84年刊)などの“絵本の本”が出て、ぼくも『絵本部屋にて』(北宋社86年刊)や『親にも読ませたい子どもの本ガイド』(大月書店91年刊)などで好きな絵本を選んできたが、それは経過中の出来事であって、世紀の意識はうすい。うすかったと思う。
 今世紀になって4年目になろうとしている今、そのうちの何冊が生き残っているのか、20世紀の宝物として、何が再版され、復刻されたのか、ちょっと知りたいところである。

20世紀の宝物をみんなで

 絵本はある意味で20世紀に開花してしまい、間口も広くなり、奥ゆきも深まった。今や絵本で“人生”をなぞらえることができる。つまり、生まれてから死ぬまで、絵本で人生できるし、その他、木の絵本、花の絵本、川の絵本、海の絵本、四季の絵本、動物の絵本(中でもイヌ、ネコ、クマは人気)、妖精・妖怪・悪魔・魔法使いの絵本、お化けの絵本、鬼の絵本、神の絵本、お正月の絵本、クリスマスの絵本、戦争の絵本、反戦絵本、人権の絵本、性教育の絵本、世界の絵本、変わったモノが主人公の絵本(例えば、ホッペタ、影、月、小人、団子、便器、靴、時代、人形、チンチンなど)etc…があり、もうこれだけで、うれしくなってくる。
 絵本で子育てにピントを寄せても、しつけ絵本、おはよう絵本、おやすみなさいの絵本、イナイイナイにハケタヨハケタヨ絵本、おまるの絵本、あいうえおの絵本、乗物絵本、123の絵本、漢字絵本etc…とあり、絵本で家族にピントを当てると、誕生日の絵本、一人っ子絵本、家族の絵本、お父さんの絵本、お母さんの絵本、死の絵本etc…と分類でき、さらに、絵本で遊ぶの旅の絵本にだけピントを絞っても、『アルゴー号の大航海』(エーゲ海)、『アブドルのぼうけん』(アフガニスタン)、『極北のおもいで』(北極圏)、『ことりのオデット』(パリ)、『たいようはいいな』(リスボン)、『ドルジェのたび』(チベット)、『にちよういち』(高知)、『ピーター・ペニーのダンス』(世界旅行)、『ベンジーのふねのたび』(船旅)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(鉄道の旅)、『ぼくらの地図旅行』、『ホンキの旅』(原始時代への旅)etc…と、枚挙にいとまがない。
 このうち、どれがロングセラーを続け、現在でも在庫があるのか。各社もきっと世紀末にボーダーラインを引いて、絶版と復刻の選択をしたに違いない。本が生き残るか消えるかは、最終的には読者が決めるが、出版社はどう思っているのか。それが知りたいし、当然、取捨選択されていい時期に来ていると思う。
 そこで今回、『21世紀に残したい絵本の本』(仮題)を作ろうと思い立ち、ある出版社のSさんに話したところ、「やりましょう」との一言。スポンサーのついたところで、約50社にアンケートを出す試案作りにとりかかった。その要旨は上記のようになる予定である。

〜アンケート〜
1 21世紀になって、絶版にした絵本は?
2 復刻した絵本は?
3 貴社のロングセラーと自社選ベスト100は?
4 21世紀に出した新刊は?
5 これから出版を予定している絵本は? 以上
アンケートにご協力、ありがとうございました。

※この趣旨に賛同の方はほるぷフォーラムまで、個人の〈21世紀に残したい絵本〉に
ついてのご意見を寄せてください。本作りの上に反映させていただきます。

前へ次へ