故中川正文先生の『すみれ島』を聴く
第14期「絵本講師・養成講座」大阪会場第4編が2017年10月28日(土)、
新大阪CIVI研修センターにて開催されました。
午前中は、故中川正文先生(作家・元大阪国際児童文学館名誉館長)のDVD講座で始まりました。
懐かしい先生のお姿、穏やかなお人柄、そして優しい声に会場が和みます。最初に先生はご自身の病歴や現在も闘病中であること、そしてご病気で声が出づらいことをお話されましたが、時には力強く、またユーモアを含んだお話しに受講生は耳を凝らして聞き入りました。先生は絵本を届けることは人間が人間に大事な文化を届けることだとおっしゃいます。だからこそ絵本は子どもに「与える」「下ろす」などという考えはやめたほうがいい、一冊の絵本を仲立ちにして同じ平面(平座)で経験を同じくし、経験を共有しながら共に成長することが大切であるとお話しくださいました。そして子どもを「育てる」と思わず、親は子どもと共に成長するチャンスを与えられたのだと考えることが、大人と子どもと絵本の基本的な関係であるともおっしゃいました。だからこそ子どもの絵本は一番ステキな絵を見せてあげたいと笑顔で話される先生の優しい声が深く心に響きました。
最後に人が優しい気持ちを持つことはどういうことかと問い『すみれ島』(今西 祐行/文、松永 禎郎/絵、偕成社)を朗読してくださいました。戦争はいけない、平和のありがたさや大切さを伝えていきたいとの先生の想い、「今日もリンゴの木を植える、明日地球が滅びようとも、それが人間の生き方です」という力強い言葉にそっと涙を拭う受講生の姿も見られました。
午後の部は「絵本講師・養成講座」専任講師の藤井勇市顧問の講演でした。始めに、危うい社会が到来している今の時代、私たち大人は社会が抱えている様ざまな問題に無関心にならず、その時代の危うさを感じ取る感性を持ち、しっかり考えた上で子ども達に絵本を届けなければならないのでは、とお話しされました。
「故中川正文先生の思い出」では、「絵本講師・養成講座」のためにお力添えいただくことになった経緯、『きつねやぶのまんけはん』(中川正文/作、伊藤秀男/画、NPO法人「絵本で子育て」センター)を出版する際のエピソードや中川先生の生きることの大切さへの想いを『絵本・わたしの旅立ち』(前同)を引用して紹介されました。
次の「三つのない社会(大人がいない社会・自分がいない社会・創造(想像)力のない社会)」で生きる子どもたちでは、大人と子どもの違い、子どもは親の発言や行動を見、模倣する。だからこそ大人がかわらなくてはいけないと話されました。
最後に子どもに注ぐ大人の眼差しについて、ご自分のお母さまやお祖母さまとの思い出から、「おばあちゃんの語ってくれたむかし話、風のそよぎ、雲の流れすべてが絵本である」と結ばれました。
グループワークでは次回の課題リポートの作成に向けた疑問や講演の感想を出し合ったり、それぞれに持ち寄った絵本の紹介をしたりされていました。今回で4回目のということもあり活発に意見交換もされ、それぞれのグループの「カラー」が出てきている感じがしました。
一編一編の講座を大切に、しっかり考えることの出来る大人になるための学びを共に続けていきたいと思いました。(あさこし・さちこ)
(あさこし・さちこ)
(スタッフ集合写真)
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