「言葉」について深く考えた日
第13期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場第2編)は、夜半からの暴雨風も静まり、くちなしの優しい香りに包まれた6月25日(土)、芦屋ラポルテ・山村サロンで開催されました。
司会の加藤美帆さん(芦屋3期)の優しい発声で講座がスタートしました。
午前は、吉井康文氏(こぐま社専務取締役)の講演です。演題は「絵本の力・ことばの力・子どもの心を育む力」。机上にたくさんの絵本が並べられています。どんなお話が伺えるのか緊張の中に期待が膨らんできます。「今の私たちの生活の中には光と音、映像が溢れている。そんな中でなぜ絵本なのか。絵本はコミュニケーションツールの一つ。本来は1対1で子どもの目を見て、その子の状況を見ながら読むものである。みんなに受ける絵本ではなく、その子のために読む絵本であってほしい。家庭での読み聞かせの本来の意味を広め伝えてほしい」との吉井氏の熱い思いが伝わってきました。たくさんの絵本の読み聞かせを通して詳細な解説もしていただきました。絵本には想像(創造)力や記憶力を育むよう作家の思いが詰まっている、と改めて感じました。
午後は松居直氏のDVD講演です。今期はご高齢で体調が優れないため、2010年の芦屋での
講演を視聴していただきました。松居氏は「読者にお目にかかることは、次の仕事に大きな意味を持ちます。本は人と人の関係なのです」とお話を始められました。
また、「20世紀はお金と物が中心の時代であった。精神的な文化が弱体化して、お金と物にはない『命』が疎かになっているのではないか」、と厳しく言及されました。さらに、「『命』とはどのようなものか『いただきます』とは、植物や動物の命をいただいて自分の生命を守っている。『ありがとう』の感謝の気持ちを忘れてはいけない。教育を受ける前に言葉を命のある言葉として実感させることが大切」、と説かれました。
偶然ですが、お二人とも『星の王子さま』(サンテグジュペリ/作)の、「人にとって大切なものは目に見えない」を引用され、大切なものは何かを考えさせられる講座となりました。
グループワークで藤井勇市専任講師から、「松居先生のお話は6年前であるが、現在の危うい社会の到来を予感されていたのではないか。現今の、ジャーナリズムに見られる『バンドワゴン効果』に惑わされないで、自分の意見(考え)を持つことが大事」、と話されました。
続いて、熊懐賀代さん(芦屋4期)が『いない いない ばあ』(松谷みよ子/文、瀬川康男/絵、童心社)を読んでくださいました。熊懐さんの優しい声が会場全体を温かく包みました。
その後、グループで『いない いない ばあ』をお一人ずつ読み聞かせをしていただきました。いつも読んでいる絵本でも他人(ひと)に読んでもらうと、思わぬ発見があり、終始楽しく意見交換ができました。「みんなで同じ絵本を読んだ意味は何ですか?」との質問がありました。一つ一つの答えを自分たちで考える講座であることを思い出しました。次編の学びも楽しみです。
(つぼうち・ひとみ)
(講座風景)
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