考える力を持つ大人になる
第12期「絵本講師・養成講座」芦屋会場第5編が冬至間近の2015年12月19日(土)、
芦屋ラポルテホールにて開催されました。
急に冷え込んできた冬らしい朝、各地から集う受講生の笑顔もさわやかです。
会場にはほのかなコーヒの香り、司会の加藤美帆のアナウンスが流れて講座が始まりました。
午前の部は、元大阪国際児童文学館名誉館、故・中川正文先生のDVD記念講座「絵本・わたしの旅立ち」(東京7期「絵本講師・養成講座」第1篇より)です。
懐かしい先生のお姿、やさしいお声が聞こえてきます。
ご自身の病歴を話される中川先生は、淡々とユーモアを交えながら会場を和ませつつ本題へ、ご病気のため声が出づらい先生のお話に、受講生は耳を凝らして聞き入りました。
答えを簡単に知りたい人が多いが、1回見聞きしてわかったようでも時間と共にすぐに忘れる、繰り返し読み重ねて本物を自分のものにしていくことが大切。
大人の本来あるべき姿は子どもと同じ高さに立つこと、親と子は同じ高さで一冊の絵本を仲立ちにして経験を分かち合いともに成長する、子どもには素敵なものを見せてあげたいとおっしゃる先生。
最後に人がやさしい気持ちを持つとはどういうことかと問い、絵本『すみれ島』(今西祐行/文、松永禎郎/絵、偕成社)を朗読されました。
戦争はいけない、平和のありがたさや大切さを伝えていきたい、「明日地球が滅びようとも今日は林檎の木を植える」それが「生きる」という事です、という先生の平和への強い想いが満ちたようでした。
後半「絵本講座・養成講座」専任講師の藤井勇市顧問によるお話では、私たちがどんな時代で生き、どんな社会を生きていくのか考えなくして絵本を語れないのではないか、と問題提起されました。
中川正文先生が「絵本講師を養成する」活動の設立から今日までを支えてくださった日々の思い出、著書や絵本から教わるものの大きさを改めて感じ、また、今は亡きお母様との思い出から私たちが生まれ育ち老いる現実から目をそらさないで人間らしく生きることの大切さを思いました。
「大人のいない・自分がいない・創造(想像)力のない社会」の中、例えば集団的自衛権、原発、沖縄問題、消費税、TPP等々知る必要があります。
大切なのは子ども達がどんな時代にも生きていけるための教育です。
それは「読み聞かせ」によってもたらされる温かい時間と空間を共に経験することに支えられるでしょう。
最後に引用された長田 弘氏の著書『読書から始まる』(NHK出版、2001年)にある「書かれていないものへの想像力」を今からでも取り戻さなくてはならないのです。
グループワークでは最終講座に向けての課題レポートを手に、自分の絵本講座に取り組む受講生の真剣な表情が見えます。
絵本に惹かれつつ、子育ての折々にその不思議な力を感じた経験談を話す受講生の目が輝き笑顔がはずみます。
私たち一人ひとりのできることは小さくても、時間がかかっても、本物の考える力を持つ大人になるための学びを共に続けたいと思いつつ会場を後にしました。
(ゆだて・ようこ)
受講する皆さん |