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報告者
報告者 大長咲子(理事)
理事
大長咲子
 第4編 〜 絵本講座の組み立て方 〜
2014年8月24日(土)芦屋 ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 司会 加藤美帆第11期「絵本講師・養成講座」芦屋第4編が2014年8月24日(土)、ラポルテホール3階特設会場にて開催されました。
 不安定な天候続きの今夏。この日も各地から来られる受講生の足もとを案じながらの朝でしたが、幸い、天候や交通機関に大きなくずれはなく、皆さんが学びの場に集われるのをお迎えすることができました。  

 会場に到着した受講生の方々は、開講までの時間を講義の準備や、顔見知りになった方との歓談、参考図書の購入と、思いおもいに過ごされていますが、講座開始5分前ともなるとそれぞれが席につき、講義を受けるべく引き締まった表情になります。「絵本講師・養成講座」で、ひとつでも多くのことを学び取ろう、感じようという受講生の意欲がみなぎり会場の空気がきゅっと引き締まる瞬間です。

 午前中の講義は、川崎医科大学名誉教授でkids21子育て研究所所長の片岡直樹先生です。 『テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している』と題したご講演の中で、片岡先生は長く臨床の小児科医として子どもたちを診てきた経験から、いわゆる先天的な自閉症児とは違った「新しいタイプの言葉遅れ」の子どもたちが増えていること、そして、それには現代の子育て環境が起因していることを指摘されました。

  講演する片岡直樹氏 テレビやビデオをつけっぱなしの環境や、電子おもちゃや電子ゲームといった昔にはなかった子どもたちの遊びということはもちろんですが、周りの大人たちが、子どもにとって良かれと思っていること(早期教育の一環としての英会話教材の連続視聴や、フラッシュカードなど)も含まれているという指摘とともに、今まで先生が診てこられた子どもたちの生の生活環境が事例としてスクリーンに映し出されると、初めはただ驚きの表情だった受講生の皆さんも、納得と確信を得られたようでした。前回テキストによる学習で、現代の子育て環境と早期教育やメディアとのかかわりについて学習をされた受講生にとって、さらに理解を深められたことでしょう。

  私が、芦屋会場1期生として、この講義を受けたときも強い衝撃を受け、絵本講師としてこの現状を伝え、片岡先生も提唱されるように、子どもたちの成長には心と心が直に触れ合う子育てがいかに大切かということを訴えていかなくてはと強く思いましたが、その10年前と比べ、今はスマートフォンの登場でますます電子メディアが子どもたちにとって身近に迫ってきているように感じます。成熟した大人にとって便利なツールであっても、発達途上の子どもたちにとって決して心を育てるものではないことは明らかです。 絵本講師として伝えるべきことが、またひとつ明らかになったのではないでしょうか。

講演する森ゆり子  昼食をはさみ、午後は当センターの森ゆり子理事長による絵本講座です。 昼休みには、講座の準備のためにたくさんの絵本や参考図書が演台に並べられましたが、熱心にメモを取る方や、知っている絵本について意見を交わし合う方の姿が見受けられました。

 『絵本で子育て』と題して、幼稚園の保護者に向けてという設定での講演が行われました。今後、絵本講師として活動していきたい、また最終レポートの「わたしの絵本講座」の構想をそろそろ練っていかなければいけない受講生にとっては、大変興味深く、皆さん真剣なまなざしで講座を聴いておられました。
  しかし、理事長が優しい声で『ちびゴリラのちびちび』の読み聞かせを始められると、受講生の皆さんかの顔から緊張が解け、柔らかな語り口とユーモラスなチビチビの表情、また繰り返しチビチビに語りかけられる「だいすきだよ」という言葉につられ、おだやかな表情になっていきます。まずは、この1冊で絵本のちからを実感されたようでした。

 『いないいないばあ』では、子どもたちの心の成長にとって欠かせない、対の感情(快と不快、別離と再会など)を、『いいこってどんなこ?』では、ありのままの自分を受け止めてもらえることの幸せ、そしてそれによって育まれる自尊感情の大切さを、『わたしのいもうと』では、現代の子どもたちが直面しているいじめの問題、ひいては人の心を思いやるということを伝えてくださいました。

 理事長の素直に、淡々と、しかし心のこもった読み聞かせは、素敵な絵とともに心の中に浸み込んできます。受講生の皆さんは、子どもに絵本を届ける(読んであげる)ということがどんなことであるかを身をもって実感されたことと思います。

最後に、『さっちゃんのまほうのて』を読まれました。受講生の中には、目に涙を浮かべる方もおられました。絵本で心が揺さぶられる。私たち大人が子どもたちに伝えていくべきことが、またひとつ見えた一瞬でした。
 一つの作品が世に出るまでには、長い長い抱卵のような熟成を待つ時間が必要なのだということも教えていただきました。
 こうした作り手の思いや作品の背景を、私たちもお母さん方にお伝えしていきたいと思いました。

 グループワークでは、それぞれのグループで片岡直樹先生の講演を聴いて子育て環境の現状で思い当たることや、森ゆり子理事長の講座の感想、また次回のレポートの課題である「絵本講座の組み立て方」について活発に議論されていました。

 4回の講座を経て、受講生の皆さんは、絵本講師として溢れるほどの伝えたい思いと、それをどう表現するべきかを模索されているようです。しかし、仲間ともに学び、苦労しながらも出来上がった「わたしの絵本講座は」かけがえのないものとなるでしょう(私がそうでした)。講座はあと2回となりましたが、私たちスタッフも受講生の皆さんとともに学んでいきたいと思っています。絵本のちからを信じて!

(だいちょう・さきこ)

第11期「絵本講師・養成講座」
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