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報告者
報告者 皆川昌子
東京10期生
皆川昌子
〜 絵本講座の組み立て方 〜
2014年7月26日(土) 飯田橋レインボービル
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

絵本の中の豊かな人生

 第11期「絵本講師・養成講座」東京会場第3編は2014年7月26日(土)、飯田橋レインボービルで開か司会 大久保 広子れました。3回目ともなるとグループメンバーもすっかり親しくなり、会場に入るなり近況報告がかわされ、和やかな雰囲気で始まりました。  

 午前の講座では、飫肥糺氏が批評家の視点から日本社会の現状について語ってくださいました。続いて3冊の絵本を紹介しながら社会や自然とのかかわりの中での人間の生き方についてお話しされました。
 午後は、絵本作家のとよたかずひこ氏が読み聞かせを実演しながら、作り手の立場から絵本の楽しさについてお話ししてくださいました。

  飫肥氏は、はじめに日本の子どもの数が年々減少していること、子どもの貧困率が非常に高いこと、世講演する飫肥糺氏界から見る日本の姿など今日本が抱える多くの問題についてお話されました。また、人間の歴史は成長と平和、混乱と喪失の時代を繰り返しているが、今の日本が危うい状況なのではないかとも語られました。

  次いで、17世紀末に描かれた『ながぐつをはいたねこ』(シャルル・ペロー/作、三木卓/文、井上 洋介/絵、復刊ドットコム)を朗読され、権力者と市井の人々、富める者と貧しい者を対比させつつ、この時代に貧しい人々がいきいきと生活していたのではないかと語られました。

 次に『ガンピーさんのふなあそび』(ジョン・バーニンガム/さく、みつよしなつや/やく、ほるぷ出版)を読んでくださいました。多くの人に愛されている絵本です。約束を交わしながら、次々に動物たちや子どもたちを舟に乗せてあげるガンピーさんは、何があっても怒らずに起きてしまったことを大人の責任として受け入れていくという生き方について語られました。
 最後に、『アンジェロ』(デビッド・マコーレイ/作、千葉茂樹/訳、ほるぷ出版)を読まれました。頑固で仕事一徹な壁塗り職人のアンジェロが弱っていたハトの世話をしていく中で 確かなコミュニケーションが生まれていくというお話でした。老いたアンジェロが、死にゆく最後の時まで、相手(ハト)に責任を果たす姿は感動的でした。 ガンピーさんやアンジェロのような地味だけれど信じるところに従った心豊かな生き方を私たちが絵本によって体験できることは素晴らしいことだと思います。

  とよたかずひこ氏は、「ももんちゃん」(童心社)や「ワニのバルボンさん」(アリス館)、「でんしゃにのって講演するとよたかずひこ氏」(アリス館)などやさしいタッチのほのぼのとした絵本を沢山描いておられます。
 まず、紙芝居「はいタッチ」の実演に始まり、一つ一つの作品がどのような時どのような状況から生み出されたかをユーモアたっぷりにお話ししてくださいました。
 イラストレーターというお仕事から、絵本作家になられたきっかけが お嬢さんたちの子育てであったことを紙芝居『ゴロゴロゴロン』や『でんしゃがくるよ』などを通して語ってくださいました。ゆったりした読み方、間合い、擬音や繰り返しが心地よく、すっかり引きこまれました。
 作品の力は技術やうわべの面白さだけではなく、作家の人となりや生き方が出てくるものであるというお話や、作品は作家の手を離れて独り立ちするものだから、作家は作品だけで勝負するという強い思いをうかがうことができました。
 また、子どもたちにはドラマチックではなく、たんたんとした当たり前の作品が受ける。それは、子どもの当たり前の期待にこたえているからであり、そのことが大切であるというお話しは、子育て全体に通じることだと思いました。
 一つの作品が世に出るまでには、長い長い抱卵のような熟成を待つ時間が必要なのだということも教えていただきました。
 こうした作り手の思いや作品の背景を、私たちもお母さん方にお伝えしていきたいと思いました。

グループワーク風景 その後はグループワークに入りました。お勧めの絵本を順に読んでいくグループなど それぞれ熱心な話し合いがされ、同じこころざしを持って学ぶ人たちの熱気が伝わってきました。
(みながわ・まさこ)

第11期「絵本講師・養成講座」
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