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報告者
中出 素子講師
芦屋4期生
中出 素子
第3編   〜 絵本講座について 〜
2014年6月21日(土) 芦屋市ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 第11期「絵本講師・養成講座」芦屋会場第3編は2014年6月21日(土)、ラポルテホール3階特設会場にお司会 加藤美帆 いて開催されました。  
 雨予報にもかかわらず、閉講までなんとか雨も降らずにすみました。3回目となり参加者のみなさんが会場の様子にも慣れ、最初のピーンと張り詰めた雰囲気からは緊張感も薄れ、表情にゆとりがあるように感じました。

 午前の部は、飫肥 糺氏による講演で演題は「だから ぼくは絵本をよむ」でした。

講演する飫肥 糺氏
 30年間読み続けてきておられる『がんぴーさんのふなあそび』を読んでいただきました。静かなやわらかい声がとても心に響きました。私自身も、これまで何回も読み聞かせをしてきた絵本ですが、自分が聞くことはほとんどなかったのです。子どもはこんな風に聞くのだなあと感じました。
  58刷 約20万人の人が手に取り、実際に読んだ人はその5倍になるでしょう。先生も30年読み続けて、だんだん深読みが出来るようになったとおっしゃいます。ガンピーさんを「中産階級で、清潔感のある人」と家の前に立つガンピーさんの絵から分析。「舟遊びに出掛けるのにきちんとブレザーを着ているし、ボタンもとめている」と。なるほど。毎回見ているのに、そんな風に思ったことはありませんでした。
  ガンピーさんは乗りに来る動物たちに「いいとも」「・・・しないでね」と条件めいた一言をつけて乗せて行くのですが、「ガンピーさんは、『今日は1日楽しむぞ!』という強い気持ちがあり、動物たちの約束違反も含めて自分の責任で引き受けている」と。ボートがひっくり返っても何にも咎めないで、ガンピーさんは動物たちを家に連れ帰り、お茶会にも招いています。お茶会場面はほっとする気持ちよさが伝わってきますが、「一番楽しんでいるのは、ガンピーさんです」と嬉しそうにおっしゃる飫肥先生。
 穏やかな優しい声で読んでおられるのを聴いていると、飫肥先生がガンピーさんそのもののような気がしてきました。今日はとってもゆっくりと一語一語かみしめるように丁寧にお話しいただき、心にしみました。
 ずっと飫肥先生はお孫さんと共に絵本を楽しまれてきましたが、そのお孫さんも早や14歳になられ、今やスマホ世代。「スマホを欲しがっているんです」とのことですが、その後どうなったのか知りたいものです。最後に飫肥先生が「最近、素直でありたい、正直でありたいとよく思います」とのお言葉に共感を覚えるとともに、胸が熱くなりました。

午後の部は
とよた かずひこ氏講演「でんしゃにのってももんちゃんがやってくる―――自作を語る」講演するとよたかずひこ氏

紙芝居『はい タッチ』
間をとりながら絵を抜かれ、現れる次の絵に会場が笑い。ちょっと大人も意識した場面では出席者から大人ならでの笑いが聞こえました。

紙芝居『ゴロゴロゴロン』
ご自分の実生活の体験が作品になったと、娘さんとおふとんでゴロゴロゴロンをしたことを話してくださいましたが、しかし絵本が出来上がったのは2004年で、リアルタイムではなくて残念だったとのこと。このように絵本作りのきっかけは、子育てだったとおっしゃいました。

紙芝居『でんしゃがくるよ』
これも実生活の体験から書かれたそうです。 『でんしゃにのって』 出身地宮城県を走る電車の駅名が、お話しのヒントになったそうです。

『ばしゃにのって』
うららちゃんシリーズの15年ぶりの作品。次に出版予定の「いかだにのって」を少し紹介していただき、楽しみです。

『バルボンさんのおでかけ』
バルボンさんという名前が野球選手の名前だったとは知りませんでした。そして血液型は0型、年齢は33歳、独身だったとは。もちろんその後保育園の先生と結婚しますが。

『どんどこ ももんちゃん』
スーパー自立した赤ちゃんにし、大人も楽しめるようにしたとのこと。ある中学校で「走れ メロス」の授業の際にこの絵本を使った先生がおられました。生徒たちの正直な感想を披露していただきました。

 とよた先生は、「淡々とした安心出来る日常を」とおっしゃいました。「本を閉じた時、次の朝 起きる 時に元気に生きて行こう」と思って欲しいと願って書いているそうです。そして、誰に向けて書いてい るかを意識されているし、読み聞かせをする大人も視野に入れておられるそうです。これからとよた先 生の作品を読む時、読み手へのメッセージにも耳を澄まして読みたいと思いました。絵本作家のご自身 の作品の紹介はとっても嬉しいです。作り手の思いを受け止めて、これからもっと心をこめて読みたい と思わせてくれます。

講義する藤井勇市専任講師 藤井勇市専任講師からは、テキスト第2巻の訂正についての説明と、第3巻にある「調査データ」についての説明などがありました。調査データは2004年のもので、「絵本講師・養成講座」をスタートした時の事実であり、その後10年を経ても読書環境の顕著な向上はあまり見られないのが現状なので、ある意味貴重なデータと言える。いずれ改訂はあるだろうとの説明がありました。

 グループワークでは、2つの講演の感想、3回の講座を終えてのこグループワーク風景れからの抱負など、リーダーの方の進め方がよく、皆さん どんどん発言されていました。

 第1編は全体にすごい緊張感が感じられましたが、今回は力みが取れて、リラックスされているのを感じました。皆さん 絵本に対する勉強意欲はすごいと思います。それをお母さん達に伝えて行くこと、お母さんが絵本をはさんで子どもと向き合い子育てしてくことの大切さを伝えるのが「絵本講師の使命」であることを、もっと意識していただきたいと思いました。絵本の勉強は本当に奥が深くて、勉強すればするほど絵本って素晴らしいなあと感じますが、それだけで終わってはいけないのだと、自分にも言い聞かせました。(なかで・もとこ)

第11期「絵本講師・養成講座」
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