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報告者
藤野貴代子
芦屋10期生
藤野 貴代子
第2編   〜 読み聞かせについて 〜
2014年4月26日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

司会 加藤美帆 4月とは思えない夏日となった4月26日土曜日。会場のラポルテホールに受講生の皆さんが、開講式のときの面持ちとは少し違い、にこやかな表情で会場に入って来られました。

 司会の加藤美帆さん(芦屋3期生)の優しい声で、第11期「絵本講師・養成講座」第2編が、始まりました。


藤井勇市専任講師

 

 まずは、藤井勇市専任講師から、

  • 第1回目のリポートの疑問、質問に対しての回答や絵本講師の学び方ついて。

  • 芦屋会場では、車椅子で登場されたむの たけじ先生が、東京会場では、元気に杖をついて歩かれ登壇されていたこと。

  • 子育て情報紙『絵本フォーラム』に小澤俊夫先生が、連載されること。

  • 3年ぶりにはばたきの会で、小出裕章先生が6月8日に講演会を開催されること。

  • ことなどを報告されました。


 その後、弓立瑤子さん(第7期)が、本日の課題である<松谷みよ子赤ちゃんの本『いない 読み聞かせ 弓立瑶子いない ばあ』(瀬川康男/え、童心社>の絵本をゆっくりと読まれた後、グループワークに入りました。

 午前中の講座は、『いない いない ばあ』を、一人ひとりが、読む課題に取り組みました。

 私の入ったグループは、読み終わった後、いろいろな意見や感想を出し合いました。

 「我が子に読むときと違って、ドキドキして緊張しました」「読みながらこの読み方で良いのか、考えてしまいました」「自分の読み方が、スタンダードだと思っていたが、いろいろな読み方があることを知りました」「今日、皆さんに読んでもらって、大人でも心地よくなりました」などいろいろ出てきました。

 その後、『いない いない ばあ』について、話が弾みました。
わが子に絵本を読んだ時、「ばあ!と動物の顔が出てくるとき、動物のしっぽの位置が変わるのはどうして」と聞かれ、答えられず悩んでいました。すると、子どもが、「ば〜あ!と言われた時、動物がびっくりして飛び上がって、しっぽが反対になったんだ」と言いました。「私は、今でもどうして反対になったのか、分かりません」。子どもは、大人と違い絵をしっかりと見ていることと“子どもの想像力って、すごいなぁ!” とみんなで感心をさせられました。そして、発行から47年間、この絵本が、読み続けられていることにびっくり!「この絵本がどうして、読み続けられているのか?」という話題になりました。

 「シンプルな絵と言葉の簡単な繰り返しが、子どもの心に残る」「絵が優しくて好き」「狐の顔が、おもしろい」「動物の顔が隠れて出てくることが、不安から安心とつながる。子どもに安定感を与える本である」「ねずみが、最初と途中、最後、裏表紙に出て、ねずみの存在がおもしろい」「絵の描かれている位置、ページ、文字の位置など計算され、制作されているように思う」などたくさんの意見が出てきてきました。私は、みなさんの気づき、意見に感心をさせられました。

講演 松居直氏 午後からは、楽しみにしていた松居直氏(児童文学家・福音館書店相談役)の講演でした。
松居先生が会場に入られた時、年齢を感じさせない姿勢の良さと、微笑みながら頭を下げながら入って来られるお姿についつい見とれてしまった私でした。

 先生は、福音館書店の創業に参画して、月刊物語絵本『こどものとも』を創刊し、編集長として、赤羽末吉、長新太など絵本作家などを世に送り出された方です。

 演題は「絵本のよろこび」。講演の始まりです。
先生は、「年を取ったので座って話をさせていただきます」と言われた後、年をとることは、自然現象で自分が何歳なのか気にしない。今日をどう生きるかを考え、いつまで生きようとは考えない。と “生きる”ことについて話し始められました。

 《現在は、“いじめ、自殺、事故死”など死ということが、日常茶飯事になり、死を見ないように避けて通ってしているように思う。そして、言葉のもつ精神力も弱くなっている。》と話され、
自分の育った時代背景について、続けられました。

 《自分は、1926年生まれで“命”ということを考えたのは、戦争中です。朝から晩まで考えさせられました。5歳のときに満州事変。10歳で日中戦争。14歳で太平洋戦争。18歳で敗戦、終戦を迎えました。2人の兄が戦死をして、自分が靖国神社に遺骨を引き取りに行き、両親に元に届けました。その箱の中に、遺骨は入っていなかった。そのような時代を生きてきました。
 終戦を迎え、“生きる”ということが見えなくなられ、トルストイの『戦争と平和』の中に、見出され、その後、同志社大学のチャペルで、岩佐先生の聖書の朗読と見事なスピーチに、心が震え、人間として生きていくために、言葉がどれだけ大事であることを考えるようになった。》と続けられました。

 先生が、繰り返し取り上げられているのが、“人間は、身体の内も外も言葉でできている。言葉なくしては、生きていけない。一番言葉を実感できるのが、幼児期である”母から命、身体をもらい生活を支える言葉をもらった。「子どもが、育つのは、家庭である。言葉を身に付けるのも家庭である」とハッキリした口調で語られていました。

 続いて、「現代は、子どもたちは、機械音、騒音の中で育っている。テレビから聞こえてくる言葉は、機械の言葉なのです。人間同士の会話こそが言葉である」と話されていました。言葉とは、人間の気持ちが、心に根付いている愛情なのです。わらべうたや子守唄のように、言葉の意味でなく、言葉に込められた、母の気持ちが伝わる。その言葉の力を心で体験することが、子育ての重要なカギになると話されました。

 絵本を読むことは、父や母の声を聞き、心の結びつき面白さの奥にある生活や感じ方を感じるもの。自分は、幼稚園の時に絵本を読んでもらったとき、内容よりも寝てしまう母の顔や読んでもらったとき、踊り出した自分など家庭生活を思い出す。
子どもは、読んでもらうことで一緒にいることを感じ、読んでもらったとの時の声の感じ、ぬくもりなどを一生忘れられず思い出が、子どもの心の中に残るのです。「絵本作者を覚えていなくとも、読んでもらった人のことを覚えている」と大人が子どもに絵本を読み、同じ心と喜び共有すること、その積み重ねが、心で見て感じる力を養う。このことが、絵本の与える喜び、絵本の持つ力が心に刻まれました。

 その後、絵本についてお話になりました。まずは、『おおきなかぶ』(ロシア民話、A・トルストイ/再話 内田莉莎子/訳、佐藤忠良/画、福音館書店)自分が編集をしたもので、小学校の教科書にも載ったのですが、こんなバカ絵本はないですよ。大うそです。動物が、引っ張るなんて考えられないのですが、子どもは、事実ではないことに共感をしているのです。うそが語る真実です。真実とはなにか、佐藤忠良先生の絵が、子どもたちに真実を語り伝えているのです。

 最後に、“人間にとって大切なもの言葉や心や愛、悲しみといったものは、目には見えないもの”と教えてくれた本として、サン=テグジュベリの『星の王子さま』(内藤濯訳、岩波書店)を挙げられました。《言葉は、目に見えないものが、目に見えるように感じさせてくれる。大切なものが目に見えるように、子どもたちを育てていかないといけない》と話されました。大切なものが、心で見て、感じる力を養うことが大切です。とお話になられました。

 松居先生のお話が終わり、藤井専任講師よりお話がありました。
松居先生は、本講座で20数回講演していただいているが、本日の講義はいつもと違っていたように感じました。先生は、家庭に言葉が不在になっている。言葉の復活、人間のありようの復活を父母、祖父母、兄弟が、本を読むことで関係を取り戻したいとお話になっていました。
  本当に大切なものは、読んでくれた人の優しさ、共有したこと人を思い出す。ドキドキワクワクの時間を共有することある、と話されもう一度グループワークに入りました。

 午前中は、読み方など気にしていましたが、松居先生のグループワーク風景話を聞いて、読み方ではなく一緒に読んで、時間を共有することが大切だと分かり良かったです、との意見が出ていました。

 私は、子育てが終わり、孫ができる年になりました。子育てをしている時に、松居先生の話や絵本講座に出会えていれば良かったと思いました。これからは、母になった我が子、孫に、子育てをしている方に、絵本の力・喜びを伝えていきたいです。

 次回3編は、2ヵ月後の6月21日です。暑くなっていると思います。お身体に気をつけてください。(ふじの きよこ)

第11期「絵本講師・養成講座」
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