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報告者
芦屋8期生
杣友 桂子
第2編   〜 読み聞かせについて 〜
2012年6月23日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 第9期「絵本講師・養成講座」第2編(芦屋会場)が6月23日(土)、芦屋ラポルテホール特設会場で開催されました。梅雨の季節ですが、この日は爽やかな晴れ空が広がっていました。
会場を入ると前方にも後方にも置かれていたのが、当日のゲスト講師の著作の山。やはり受講生の方々の目にも止まったようで、開講時間ぎりぎりまで絵本を手に取り、みなさんがとっても温かな表情を浮かべてらっしゃるのを拝見し、改めて絵本を好きな人たちが集まった場所なんだなあと実感しました。


午前の部では、批評家・エッセイストの飫肥 糺先生が、「3.11と子どもたち。そして、絵本のこと。」をテーマにご講演くださいました。
昭和20年の「戦時中の実際」と、東日本大震災という“とんでもないこと”が起きた「3.11の実際」とを重ね合わせ、その現実の中で実際に大勢の人の死にふれた子どもたちがいることを覚えておきたいと仰いました。
そして、同じようにつらい境遇にあった子どもたちを記した写真絵本『おもだしてください あの子どもたちを』(こうせい・ぶん:C.B.アベルス/やく:おびただす/ほるぷ出版)をご紹介くださいました。ヒトラー政権下でナチスの虐殺にあった子どもたちがどんな風に生きたのかを、痛ましい事実と共に淡々と記した写真絵本です。

また、「戦争というものはなくならないが、戦争のない世界をつくろうという意識は持ち続けないといけない」「地震そのものを避けることはできないが、地震に抗う力をつけなくてはいけない」ということを重ねて話され、そこから「コミュニケーション力」の必要性へと話が進みます。
そもそもコミュニケーションというものは、おしゃべりのような「感情の交換」「共感」から始まるものであり、その力を培うのに「本」が最高のツールとなるのだというお話を聞いていると、その中でも極めて純粋な読み物であり、ほぼ万人に受け入れてもらえる「絵本」には、とても大きな役割があることを実感しました。

そこからはご持参くださった絵本を立て続けにページをめくりながらご紹介くださいました。 『ちびゴリラのちびちび』(さく:R.ボーンスタイン/やく:いわたみみ/ほるぷ出版)、『ルピナスさん』(さく:バーバラ・クーニー/やく:かけがわやすこ/以下同)、『ないしょのおともだち』(文:B.ドノフリオ/絵:B.マクリントック/訳:福本友美子)、『アンジェロ』(作:D.マコーレイ/訳:千葉茂樹)、『ぼくを探しに』(作:S.シルヴァスタイン/訳:倉橋由美子/講談社)。どの絵本を読むときにも、小さな子に戻ったように絵を見つめ、とても大事そうにそのストーリーや登場人物についてご紹介くださる飫肥先生のお姿が素敵すぎて、胸がキュンとしました。お姿だけでなく、その語り口もとっても温かく、不思議と心を動かされました。大人になっても、こんなふうに絵本を紹介できる人になりたいなあ、と大変勉強になった時間でした 。

昼食をはさんで、午後からは絵本作家とよたかずひこ先生による講演です。「電車にのってももんちゃんがやってくる―自作を語る―」というテーマで、ご自身の紙芝居や絵本の読み聞かせをもりだくさんに詰め込んでお話をしてくださいました。
まずは紙芝居『ハイ・タッチ』(童心社)。
宮城県仙台市ご出身のとよた先生が、2011年6月に刊行された紙芝居です。制作が始まったのは随分と前なので、同年3月に起きた東日本大震災のことを考慮して創ったものではありません。
しかし、被災地の保育園で働く先生たちから、「読み聞かせのときに使ってよかった」というお声を頂いたと話されていました。そう仰る笑顔がなんだかほっとしたように見え、胸に迫るものがありました。
そして、ご自身の子育ての経験をもとにつくられたという紙芝居『ゴロゴロゴロン』『でんしゃがくるよ』(童心社)を読んでくださり、絵本を描くようになったきっかけや、「作品の力」というものが確かにあるということなどをお話しくださいました。
また、「初めて自分が自分のためにつくった作品」として、先生がおばあ様からお聞きになったお話(青森〜仙台間の駅名)にヒントを得たという『でんしゃにのって』(アリス館)を読み聞かせてくださいました。そして休む間もなく「『バルボンさん』シリーズ」「『ももんちゃん』シリーズ」(童心社)を読んでくださり、『バルボンさん』のときには、出版時の裏話として編集者の女性とのやり取りを教えてくださいました。そして最後は、最新作の『おいもさんがね・・』です。

最初から最後まで、とよた先生はどの絵本も心から楽しそうに読まれます。そして、そのお話を聞く受講生の方々は、みんなその目をキラキラさせていました。その光景を見ていると、読み手が楽しんで読むからこそ、受け手にもその思いが伝わって絵本の世界にドップリ浸かり、楽しむことができるということを再確認できました。

そして最後にグループワークですが、その前に藤井勇市代表から、第1編のリポートの講評と、そこで出された質問への返答があり、受講生の方々が、とても真摯に、熱心にリポートに取り組まれている様子が伝わってきました。そして、質問の中で、「読み聞かせ」という表現に疑問を感じられている方が多数いらっしゃることを挙げ、「読み聞かせ」の語源や定義などを少しだけ話されました(くわしくは、第4編の講座でご講演くださるそうです)。

グループワークでは、絵本『いない いない ばあ』(ぶん:松谷みよ子/え:瀬川康男/童心社)の読み聞かせをすることに。先輩絵本講師である武田美保さんの実演を聴いた後、それぞれのグループで実際に読み聞かせを行いました。子どもではなく大人が相手ということで特別な緊張感も持ちつつ、各々の『いない いない ばあ』を実践し合いました。
当然のことながら、ページのめくり方、持ち方に始まり、ことばのアクセントや読み方が人によって異なります。同時に、同じお話でも、読む人によって受け手の印象は随分と変わります。それをあえて指摘したり、認め合ったりしながら違う議論へと発展させていく受講生の皆さんのお話は、自分自身とても得るものが多い時間でした。


次回は、夏真っ盛りという言葉の似合う8月18日(土)に開催されます。まだまだ続く梅雨に、猛暑となりそうな夏の始まりが待ち受けておりますが、その日はまた皆様と元気な姿でお会いしたいです。(そまとも・けいこ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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