第7期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)第2編は、6月12日芦屋市船戸町のラポルテホールで開催されました。
私たちスタッフの集合時間に合わせるかのようにJRにトラブルが発生し、会場最寄り駅のJR芦屋駅手前で電車が止り心配しましたが、受講者の皆様には大きな影響も少なく、講座は定刻どおりに、司会の芦屋2期生・池田 加津子さんの爽やかな声で資料確認から始まりました。
午前の講義は、批評家・エッセイストの 飫肥 糺氏。
演題は、「子どもと遊ぶ。絵本に遊ぶ」です。氏は、「最近、お孫さんやその周辺の方々と遊ぶことで、覚醒している」。「子どもの時間と大人の時間は違う、同じ30分でも感じる長さが違う」、という時間についてのお話から始まりました。
次に、『ぶんぶんぶるるん』(バイロン・バートン/作絵、手島 悠介/訳、ほるぷ出版)を読み聞かせてくださいました。この絵本は、子どもたちが大好きな繰り返しのお話です。「大人にとって意味がないことでも子どもが喜ぶ、大人は声を出して読むと有酸素運動にもなる」…。
次に、子どもという概念。子どもを育てるという概念は、17世紀・産業革命のころのジャン・ジャック・ルソー著の小説『エミール』(岩波文庫)からだということ。
南アフリカやアフガニスタンでは、子どもなのに子ども扱いされない現状など、「レジュメ1.子ども時代をどう生きるか」について語られました。
さらに「レジュメ2.コミュニケーション能力」については、今、自分以外の誰かと付き合えない人が増えてきている原因は、コンピューターや携帯電話のメールでの情報収集だけで、生の会話がないためだということ。また、つい私たち母親が、子どもに言ってしまう「○○しなさい」「早く次の○○しなさい」は、会話しているつもりでも、命令であって、コミュニケーションではないという厳しいご指摘がありました。このことがエスカレートとすると、現代問題視されている、自分の子どもに対して危害を与える虐待となり、子どもに関係する重篤な事件が増えている原因となると、衝撃的なお話がありました。
「レジュメ3.母性について」では、生来、母親になれば、身についていると思われていたが母性は、核家族化・都市化により欠落していること。
『たまごクラブ、ひよこクラブ』のアンケートでは、母親537名の91%が「子育てがいや」と答えていること、同じ方が「でも楽しいと思えることがある」とも答えているという実態を知ることがたいせつだといわれました。
コミュニケーション能力を身につけ、親子双方向での共感を確立するために絵本を読んで、と氏は、ワイド版の『ぼくにげちゃうよ』(マーガレット・W・ブラウン/ぶん、クレメント・ハード/え、いわたみみ/やく、 ほるぷ出版)を読み聞かせてくださいました。
これは、親子関係が確立し、必ず親が追いかけてくれると子は安心しているから逃げる、という内容で、さらに白黒からカラーへの繰り返しの構成も面白い本です。
大人が読む子どもの本は、「子どもに説教していないで、子どもを素直に喜ばせ、考え、悲しませ、大人が失われていたものをよみがえさせてくれる絵本」。
知識や能力を鍛えるはじめの一歩は、乳幼児期に作られるので、その時期の大人の努力がその子の20歳以降の心を豊かにする。
『ないしょのともだち』 (ビバリー・ドノフリオ/作、Bマクリントック/絵、福本 友美子/訳、ほるぷ出版)を読まれたところで予定時間となりました。
レジュメの3番までしか話せなかった、と残念がられた氏は「絵本を読み語るのは大人、読んでもらっていろいろな体験をするのは子ども」、と結ばれました。
私は、特別聴講生として2回目の講義が聞け、改めて素晴らしい絵本の世界が広がりました。 ありがとうございました。
午後講義は、絵本作家 とよたかずひこ氏。演題は「でんしゃにのってももんちゃんがやってくるー自作を語るー」でした。
氏は、お子様の前での講演活動が多いこと、<先生>と称されることがお嫌いというお話から始まりました。
まず読み聞かせは、『すいかくんがね‥』(童心社)からでした。これは、おいしい食べ物、自立した食べ物のシリーズの最新作で、シリーズに必ずある≪心配ごむよう≫も健在です。引き続き、紙芝居の『きかんしゃぼっぼくん』『ゴロゴロゴロン』と続きました。
イラストレーターだった、とよた氏は、ご自分は大人に本を読んでもらった経験がなく、絵本への思い入れは、なかったそうです。
また子どもという存在も、視界には入っておらず、ご自身がお子さんの子育てをして始めてその存在に気づき、刺激を受けたといわれました。
お二人のお子さんを育てるなかで、お子さんと布団の上で遊んだり、一緒に踏切に行って電車を見たりした体験が、お話作りのヒントとなったそうです。
さらに絵本ができる前のダミー本を持って小学生の前で読み聞かせ、3・4年生の意見を聞くことが絵本制作に役立つ話や、中学生の感想文の披露など大変楽しく聞かせていただきました。
『でんしゃにのって』は、以前お住まいされていた東北地方の実際にある駅名から生まれたこと。
ワニの「バルボンさん」シリーズのお話は、父親が読み聞かせることを意識して構想した。
赤ちゃん絵本の「ももんちゃん」シリーズ、海、山、空、森の「おふろやさん」シリーズなど数々の自作絵本、紙芝居制作の裏話をしてくださり、さらに、読み聞かせもしていただき楽しいひと時がもてました。ありがとうございました。 (余談ですが、とよた氏にいただいた本のサインは、一つ一つイラストメッセージつきで心温まるものでした)。
次に会場設営をグループワーク型に変えた後、本講座の専任講師・藤井 勇市氏より、第1編の課題リポートの講評と各質問に対する返答がありました。
その後、芦屋第4期生 武田 美保さんより『いない いない ばあ』(松谷みよ子/文、瀬川康男/絵、童心社)の披露がありました。グループワークでは、それが課題となり、読み聞かせの実践をしたり評価し合ったり、絵本について語り合ったり、受講生の方々は熱い時間をもたれていました。
次編は、8月21日(土)、講座も中盤になります。これから「じめじめした梅雨」、さらに「熱い夏」と続きます。健康に留意し、次回も元気に皆様が集えることを楽しみにしています。
(ふるた・せつこ) |