梅雨明けを迎えたはずの東京は、あいにく蒸し暑く重たい雲が広がっていました。第6期 「絵本講師・養成講座」(東京会場)第2編は 6月25日(土)、飯田橋レインボービルで開催されました。
まずは午前、批評家・エッセイストの飫肥糺先生より、「感じるこころ。感じる絵本」をテーマにご講演いただきました。
先生ははじめに、「日本人は近年、ケンカの仕方を知らなくなった」というお話をされました。「相手の話も聞き、自分の話もするというのが上手く出来ていない大人が多い」とも。自分を顧みてドキリとするお話でした。
また、「今の子ども達は、一心不乱に何事かに取り組むことが無い」というお話では、今の10才の子どもの1日の時間の使い方と、ご自身のそれとを比較し、子ども時代は熱中して“子ども”でいる経験が大切だとお話くださいました。
『あかが いちばん』(キャシー・スティンスン /ぶん、ロビン・ベアード・ルイス/え、ふしみみさお /やく、ほるぷ出版)を読んでくださった際には会場が一体となり、絵本の中にあるフレーズ「いちばん すき!」と全員が声を合わせました。
子ども時代に戻り、熱中した何事かが蘇るような、素敵な体験となりました。
続けて、『にぐるまひいて』(ドナルド・ホール /ぶん、バーバラ・クーニー/え、もきかずこ/やく、ほるぷ出版)の読み聞かせでは、古き良きアメリカの農村を舞台に繰り返される四季と、それに重なる生活の営みが描かれ<往きて還りし物語>の持つ、“繰り返し”の心地よさと共に、子どもも大人も違った受け取り方で楽しむことができる、奥深い作品に出会うことができました。
ナンセンスの世界として、『きょうはこどもをたべてやる』(シルヴィアン・ドニオ /文、ドロテ・ド・モンフレッド/絵、ふしみみさを/訳、ほるぷ出版)をご紹介くださいました。「毒味はスパイスのようなもの」と先生はお話くださいました。「こどもをたべてやる」という一見ギョッとするフレーズも、読み進めるうちに愛らしさが増すワニの子に、会場では温かく明るい笑い声があふれました。
最後に『アンジェロ』(デビット・マコーレ /作、千葉茂樹/訳、ほるぷ出版)を読んでくださいました。「人の老いや死を、子どもに静かに伝えることのできる本」だとご紹介くださいました。「死というものを、お子さんに上手く説明できますか?」との先生の問いかけに、熱心に聞き入る受講生の姿から、絵本や子育てに対する真剣な想いを抱いてらっしゃるのを強く感じさせていただきました。
午後は、絵本作家のとよたかずひこ先生に、「でんしゃにのってももんちゃんがやってくる−自作を語る−」をテーマにご講演いただきました。
まずは紙芝居、『ゴロ ゴロ ゴロン』と『でんしゃがくるよ』を読んでいただきました。ご自身のお子さんとの思い出から作品作りに繋がる、素敵なエピソードをお話くださいました。
次に、先生の代表作でもある『でんしゃにのって』 (アリス館)を、先生自らが講演の為に作られた大型絵本を用いて読んでくださいました。
先生がお祖母様(おばあさま)から教わったという、青森〜仙台間の駅弁売りの楽しいエピソード。先生の作品は、ご家族との温かい生活から生まれてくるのがよく分かり愛情を感じました。
『バルボンさんのおでかけ』 (アリス館)の主人公は、先生がお気に入りの野球選手から命名されたワニのバルボンさん(33歳独身!)。そのシリーズ化の裏話をお聞かせくださり、会場からは快い笑い声が響きました。
また、先生は「子どもに絵本を届けるには、大人の存在が必要」と、読み手となる大人の重要性をお話しくださいました。
在り得ない設定=ナンセンスの楽しさを、「自立した赤ちゃん」で表現された『どんどこももんちゃん』 (童心社)と、自立した食べ物」シリーズの『おにぎりさんがね』『たまごさんがね』(童心社)をご紹介くださいました。
「子ども時代にマジカルワールド (虚実の世界と現実の世界) をいっぱい遊ぶのが大事」とお話くださり、ちょっとオトナになった中学生の読書感想文のエピソードから、絵本作家のお財布事情 (?) にまで話は及び、受講生は興味津々で聴き入っていました。
講演後は、藤井専任講師による第1編課題リポートの講評や質問への返答がありました。
グループワークでは、課題の『いない いない ばあ』(松谷みよ子/文、瀬川康男/絵、童心社)の読み聞かせの実践をしました。皆さん個性豊かに読んでおられ、本の持ち方やページのめくり方などの細かい点にも着目して熱い話し合いがされており、受講生のやる気を強く感じた一日でした。 (わかつき・みゆき) |