『森は呼んでいる』 (岩崎書店) |
『森は呼んでいる』(及川和男/さく、中村悦子/え、岩崎書店)は、山に植林を始めた、実在する1人のカキ養殖家の行動を引き金にして生まれたものです。「森は海の恋人」を合い言葉にして、気仙沼湾に注ぐ大川の上流の岩手県室根山に植林を始めたのです。小学校5年生の森人くんの目線で描かれています。
「わたしたちは自然の恵みを受けて命を生かしているのです。(略)空や海や川や森は、(略)たくさんのことを呼びかけているのです。この作品は(略)森の呼ぶ声や叫び声を耳にしながら、いっしょうけんめい書きました。どうかみなさんも、その声を聞きとってください」(著者あとがきより)
今年6月、ある大学が関東の子ども900人(小5〜中3)を対象に調査したところ、「日の出・日の入りのどちらも見たことがない」という子が52%もいたそうです。「見たことがある」と答えた子の中でも、7回以上は6%にとどまっています。以前に聞いた別の調査では、星空を見たことがない子どももかなりいるようです。この世に生を受けて10年、15年もの間、日の出や日の入り、星空を見たこともない子どもがいるというのは一体どういうことなのでしょう。 夕陽の紅や夕焼け空が暮れていく様も知らない子どもたちは、ただ自然を体験できていないだけなのでしょうか。人とかかわること、語りかけてもらうこと、心が何かを感じること等々の機会が失われてきたからではないかという気がします。
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