こども歳時記
〜絵本フォーラム第34号(2004年05.10)より〜
“あいさつ”から始めましょう
 近ごろ、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」というあいさつを耳にする機会が少なくなったと思いませんか。人類の歴史の中で、“あいさつ”の習慣を持たない民族はなかったそうです。人は人とのかかわりの中でしか生きていけませんから、人類の知恵と言えるでしょう。もしかしたら、日本人が初めて“あいさつ”を持たない民族になるかもしれませんね。

『ばいばい』
(偕成社)
 『ばいばい』(まついのりこ/さく、偕成社)は、あひる・ぞう・うさぎ・きりん・かえるが次々に「こんにちは」と出てきて、「ばいばい」と手を振るだけの絵本です。読んでもらう子どもたちは、あひるに向かって「こんにちは」と頭を下げ、「ばいばい」と同じように手を振ります。そうしてあいさつの楽しさを覚えていくのです。そして、あいさつから人間関係が始まっていくことを自然と学んでいくのでしょう。「おはよう」「おやすみ」「いただきます」「ごちそうさま」「ありがとう」……。こんな言葉のあふれている家庭がどのくらいあるでしょうか。ちょっと意識して、「おはよう」「ありがとう」って言ってみませんか。
楽しい思い出を心に刻みつけて
 『ばいばい』を読んでもらっている子どものしぐさ、そのかわいさに、読み手の心はとろけそうになってきます。その自然のかわいさが大人の心をいやしてくれます。乳幼児期の子どものかわいさは一生分の親孝行に値すると言われるゆえんです。かわいい盛りの時期をお母さんも大いに満喫しておいてください。じきに反抗期を迎えます。そのとき、乳幼児期の子どものかわいさを心に刻みつけているお母さんは、そうでないお母さんに比べて、より大きな心の余裕を持てるのではないかと思います。子どもと同じように、お母さんにも楽しい思い出がいっぱい必要なのです。  子どもに「あなたがいるから、お母さんは幸せよ」「みんな、あなたが大好きよ」「楽しいことがいっぱいあるよ」と伝えることのできる本があります。『ちびゴリラのちびちび』(ルース・ボーンスタイン/作、岩田みみ/訳、ほるぷ出版)。愛された思い出こそ、親が子どもに贈ることのできる、何ものにもかえられない宝物になるでしょう。
『ちびゴリラのちびちび』
(ほるぷ出版)

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