こども歳時記
〜絵本フォーラム第26号(2003年1.10)より〜
家族で迎える心豊かなお正月
かさじぞう
『かさじぞう』
(福音館書店)
 あけましておめでとうございます。「一年の計は元旦にあり」と言いますが、まさか小さい子どもがいるご家庭で、テレビとこたつの番してたということはないと思いますが、皆さんはどんなお正月を過ごされましたか。
 「かさじぞう」のお話を子どもの頃に聞いたことがある人も多いと思います。昔話や民話は伝わった地方や再話した人によってお話が少し違うようですが、ここでは福音館書店の『かさじぞう』(瀬田貞二・再話、赤羽末吉・画/福音館書店)をご紹介します。赤羽末吉さんの絵本の処女作ですが、雪国を描くには雪の恐ろしさを知らねばと、雪のひどい頃の雪国を5年ほど通って歩き回ったそうです。その体験があるからこそ、水墨で描かれた絵からは雪の肌や湿感まで感じられるのでしょう。雪深い山奥で暮らす貧しいおじいさんとおばあさんのお話ですが、あたたかさがしみじみと伝わってくるのは、お地蔵様が読者にも豊かな心という宝物を分け与えてくれたからかもしれません。
母の時間を食べる愛しいわが子
 赤ちゃんや幼い子どもたちも、私たち大人にとても素晴らしい贈り物をくれますよね。かわいくて、あったかくて、小さくてぷわぷわしてて、その笑顔や、しぐさは大人の心を優しくほぐしてくれますね。親になって初めてわかる親の恩とよく言われますが、親になったからこそこれほど頼られたり求められたりする経験をさせてもらえたのだと思います。子ども以外のいったい誰がこれほど、全身全霊をかけて「私」を求めてくれますか。「私」が誰かにとってかけがえのない存在であることを教えてくれたのは「お母さんお母さん」とくっついてまわり、母の時間を食べて成長している幼い子どもたちだったのです。
 覚えていますか。出産が終わってホッとした時のことを。生まれてくれてありがとうと心があつくなったことを。眠ったり笑ったりする赤ちゃんをじっとじっと見つめていたひとときを。高熱でぐったりしたわが子を前にオロオロした時のことを覚えていますか。産んだから親なのではありません。子どもとのさまざまな関わりの中で心をゆさぶられる経験をすることで、親になっていくのです。『お母さんの声は金の鈴』(著者・椋鳩十/あすなろ書房)は、子どもにとっていかにお母さんの存在が大きなものか、またお母さんの声に包まれることで育まれる大切なものがたくさんあることを教えてくれます。  絵本たちが手伝いたいと出会いを待っていますよ。
お母さんの声は金の鈴
『お母さんの声は金の鈴』
(あすなろ書房)

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