『モモ』 (岩波書店) |
久しぶりに列車で移動する機会がありました。とても、貴重なひとときでした。列車の中で読もうと用意した本も読み終えた帰りの車内の大きな窓から、ふと、空を見上げました。高い高い空、風の流れが高さによって違うのでしょう。なみ雲やすじ雲、そしておぼろ雲。雲間には、ぬけるような明るい青い空。その中を早く流れる雲、ゆっくりとどまっている雲、そして、一本の細く長い雲。むかし、子どもと公園通いをしていた頃には「見てみて、飛行機雲よ、ながーいねぇ」と親子で指さして空を見上げることも、多かったような気がします。最近はこんな時間を体験できなくなっていました。
『モモ』(ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳/岩波書店)の中の時間どろぼうが、本から抜け出して現実の世界でも時間を盗んででもいるのでしょうか。物語のなかでは、女の子モモが時間を取り返してくれたけど、現実には、モモを導いてくれたカメのカシオペイアもいません。カシオペイアを賢者の智恵、モモを豊かな時間の存在に気付いた人と読みとるなら、わたしたちそれぞれがモモになり自分の「時間の花」をみつけて解き放たねばなりません。 |