リレー

「おはなしおばちゃん」を卒業しない理由
(京都・「おはなしポケット」会員/松本 也寿子)


 私は「おはなしのおばちゃん」として、ボランティアで読み聞かせをしています。始めたのは10年以上前で、まだ読み聞かせがほとんど知られていない時期でした。ですから、活動の場も図書館など、数カ所に限られていました。それでも、1人でも多くの子どもに絵本の楽しさやおはなしのおもしろさを伝えたい、よい物語と出会って、読書の楽しみをわかってほしい、という思いで続けてきました。
 以前は、子どもだけがおはなし会にやってきて、親の姿を見ることはありませんでした。ところが、読み聞かせが一般に知られるようになったころから、親子で一緒におはなしを楽しむ姿が見られるようになりました。この光景は、おはなしをする私たちを幸せな気分にしてくれます。でも、その親子はきっと、私たち以上に幸せを感じているのではないかと思うのです。
 親子がともに楽しい時間や空間を共有し、同じ体験をすることによって、共通の話題が増えていきます。そして、会話をすることで、お互いをより深く理解することができます。このことが大切な親子のきずなを強く結んでくれるのです。親子のきずなは、子どもの人間性を形成し、情緒を育て、健やかな成長のために重要なものだと言われています。私は、そのお手伝いができることをとてもうれしく思います。おはなし会の日が近づくと、構成をどうしようかとあれこれ悩むこともありますが、それは同時にとても楽しいひとときでもあります。これからも、親子が豊かな時間を過ごせるように、いろいろな提案をしていきたいと思います。
 ところで、私が「おはなしのおばちゃん」を卒業しない本当の理由は何だと思いますか? それは、絵本が大好きで、すてきな絵本に出会ったら、だれかに教えたくなるからです。
絵本フォーラム45号(2006年03.10)より

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