リレー

子どもと魂がふれあえるように
(佐賀・相知町立図書館館長・小嶋倫子)


 先日、図書館で行った朗読講習会において、「読み聞かせは愛情の表現だ」と強く繰り返し話された講師の思いを、納得しながら受け止めました。
 講師は、フリーのアナウンサーでプロです。声もすばらしいし、朗読を聞いていると、本当に目の前にお話の情景が見えるように、イメージが湧いてきました。新美南吉の「あめだま」では、母親の子どもへの声かけや、子どもを守ろうとする母親の言葉をどう読めば、その気持ちが正しく伝えられるのか。それがとても大切なお話のポイントであり、そこに「言霊(ことだま)を伝える」という意味がある。そのようなお話を聞きなから、講師の「生きること」「命」というものへの気高い信念に打たれました。
 子どもにお話をするときは、真剣に自分の信念の裏づけができるようにありたいと思っています。朗読の方法について触れることは種々ありますが、子どもとの魂のふれあいができるような朗読は容易ではありません。子どもの心に届かなかったときは、「言霊を伝える」ための努力が足りなかったことを反省し、また、子どもの心豊かな成長を切に願うなら、いつも笑顔で接するゆとりを持ちたいと思っています。月2回のお話会で朗読を聞いてくれる子どもたちが、絵本の世界にひたり、心弾ませ、楽しんでくれるよう工夫をしているところですが、話す自分も子どもの笑顔や目の輝きに力をもらっていることを感じます。
 課題は保護者ヘのアピールです。今のところ、なかなか思うほど参加してもらえません。しかし、一面的な見方かもしれませんが、家庭でも朗読や読み聞かせをしているところは、親子ともにゆとりを感じます。そのような親子関係が築ければ、子どもはきっと本好きになるし、本から多くの糧を得ることができるだろうと思います。
 エプロンシアターやパネルシアターによる、立体的で動きのあるお話も試みています。今後、布の絵本もつくりたいし、ブラックシアターも製作したい。そしてできることなら、自作のお話もつくってみたい。希望は次々と広がっていきます。地域の方々とともに一歩ずつ積み上げていきたいと思っています。
 しかし、小さな町なのですが、本に魅力を持ってもらう啓発活動は遅々として進まず、難しさを感じています。今お話を聞いている子どもが育ったころには変わってくるでしょうか。また、この社会は正常になっているでしょうか。そうなることを願ってやみません。
絵本フォーラム37号(2004年11.10)より

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