リレー

読む声に、愛情を織り交ぜて
(山形・大石田町司書・冨樫 恭子)


 小さい子を持つお母さんに、司書の立場から絵本や読み聞かせをお勧めしています。保健師さんや保育士さんと協力しながら行っています。絵本を楽しみながら、そして遊びながら、肌のふれあい、心の通い合いを深めていってほしいという思いでいます。自分の子どもとのコミュニケーションをうまくとれないお母さんもいると聞くことがありますが、読み聞かせが親子のふれあいの一つになることを伝えたいとも思っています。
 1歳に満たない赤ちゃんも、たとえ絵本に著されていることが理解できなかったとしても、自分に向けて語られる親の声と心(愛情)はしっかりと感じ取り、満足感と幸せを味わっていると思うのです。またそのときは、読み手のお父さん、お母さんも幸せな気持ちになっているのではないでしょうか。
 子どもの周りには、美しい音と工夫された映像、上手な語りのテレビ番組やビデオがたくさんあります。でも、子どもに向けて語られる親の生の声、愛情にかなうはずはありません。お父さん、お母さんの声が一番で、それにはうまいも下手もないと思っています。小さいときにたっぷりと聞かせてあげてほしいものです。そして、親子一緒に絵本を楽しみ、読み聞かせの時間を楽しんでほしいのです。ときどき私も保育園で出前読み聞かせをしたり、図書室でおはなし会をしたりしますが、私の読み聞かせは、肉親のそれにはかなわないし、別物だと思っています。
 子どもが小さかったころ、わが家でも寝る前の10分間は絵本の時間でした。ほとんどは私が読み手でしたが、たまに夫が割り込んできて読むときもありました。きっと楽しげなひとときに見えたのでしょう。仕事を持っているので、この短い時間が純粋に子どもだけにかかわれる時間だったのです。20年以上も前のあの時間がもう一度手に入らないものかと、今になって思ったりすることがあります。
絵本フォーラム36号(2004年09.10)より

前へ次へ