リレー

「だいじょうぶ」の一言で
お母さんに心の休息を

(兵庫・芦屋市保健福祉部健康課係長・瀬戸山 敏子)


 「少しゆっくりですが、すぐ追いつきますよ」私は、仕事柄乳幼児健診に携わることが多い。生後2ヶ月頃から当センターの育児相談へ毎月連れて来ては、体重や身長がどれだけ大きくなっているのかその大きく増えたことの確認のためにです。赤ちゃんのその姿が大きく成長したことに対しては、その大きさを測ればすぐ答えが出るものだからまず母としては合格となるわけです。しかし赤ちゃんの表情や手足の動き、視線の動きを私は見させていただきます。抱かれた時の表情や何に注意を向けているのか、赤ちゃん側に立って気づいてあげることの大切さなどの話をします。
 赤ちゃんにわかる音として日常聞かされる音のなんと多種多様なことか。そんな中で赤ちゃんは小さくても音として「ウー」「ウー」としきりに出してくれます。その音をマネて母は「ウー」と返してあげるだけで会話が成り立つのです。赤ちゃんの音まねです。そして赤ちゃんの喜ぶ音に「コチョコチョ」とか「スベスベ」とか赤ちゃんのオムツをかえるたびに大きな手のひらで赤ちゃんをさすった時に出せる音をくり返して出したりしていると、赤ちゃんは、お母さんの生き生きした表情を見て、赤ちゃんからたくさんの音あるいは声を出してくれます。これがコミュニケーションのはじまりではないでしょうか。周囲にある箱から出る音は確かに音だけれども赤ちゃんの表情を見て反応してくれるものではありません。だから静かな環境の中でじっくり赤ちゃんと向き合ってくださいと伝えます。1歳6か月児健診の時など言葉が出ていないお子さんと面接する時「少しゆっくりですがすぐ追いつきますよ」と言うことが多いのです。そしてどんな環境の中で育っているのかを詳しく聞くことにしています。お母さんとしては、家事、育児を毎日こなすだけでヘトヘトになっている様子です。
 お母さんも楽しめる子育て、それが理想なのですがこういう気持ちになれるには、身近な人からお母さんの不安な気持ちに「お母さん、これでいいよだいじょうぶ」と声をかけられて「ホッ」とする時ではないでしょうか。毎日成長していく子どもの心にそった子育ては、親も一緒に育てられている大切な時間をさしていることに気づきながら。
絵本フォーラム26号(2003年1.10)より

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