リレー

保健婦の立場から
(芦屋市保健センター・保健婦 橘映井子)


写真  私は未婚で、子どもを産んだ経験もありません。しかし、保健婦という仕事についてから何百組という親子に出会い、いろんな相談を受けさせていただきました。毎月の育児相談や乳幼児健診診査、遊びの教室などを通して思うことは、親の不安解消となる存在として、保健婦はあるんだな、ということです。
 初めての子育てであるお母さんは、少しのことでも心配になり、育児書に載っている情報とは全く違う子どもの様子に右往左往しています。しかし、大抵の質問は専門家である保健婦に『それでいいのですよ』と確認してもらうことで解消されます。近所付き合いも希薄で、唯一の相談相手であるお父さんは遅い帰宅、お母さんは聞きたいことも聞けず、子どもと一対一の生活の中で一人で悩み苦しみ、『これでいいのか』と自分の子育てに自信が持てなくなつていきます。保健婦はそんなお母さんを認め、自信を持ってもらい、そして、我が子のペースに気づいてもらえるよう心掛けています。我が子のペースに気づくと、ありのままの姿を受け入れられるようになり、子どもと素直に向き合えるようです。
 最近は、家の中で家族がメールでやりとりしているということも聞かれます。テレビやビデオも当たり前の世の中になりました。自動ゆりかごなるものもあり、全自動で子育てができるようになるのは近い将来かもしれません。しかし、それで親は我が子のペースに気づくときがあるのでしょうか。肌と肌との触れ合い、耳で聞く声、ぬくもりを感じる人のにおい、目で見る表情の変化など、五感を刺激し合うことが少なくなっている昨今、我が子のペースが掴めずに悩んでいる親が増えているように感じます。
 子どもの笑顔を見たときは、どんな苦労も吹き飛んでしまいます。便利な機械では決してできない五感の触れ合いを、もう一度楽しんでみてはいかがでしょうか。
絵本フォーラム22号(2002年05.10)より

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