たましいをゆさぶる子どもの本の世界

「絵本フォーラム」第12号・2000.9
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透きとおった子どもの目

 社会をゆるがす子どもたちの事件が相次いでいる。精神医療や教育評論、心理学などの専門家らが、あれやこれやと論じているが、そのいずれもが何を言わんとしているのか、よくわからない。
 なかで、ひとりだけ耳目を傾けたくなる論者がいる。臨床心理学者の河合隼雄である。彼は子どもたちの現在を“たましい”でとらえようとしている。いじめ・不登校・援助交際・学級崩壊・そして殺傷事件…。これらの子どもたちの行為を「たましいに悪い」と理解したらどうか、と言うのである。そして“たましい”のことを語るのにすごく、適切な素材が児童図書だとしているのである。
 なるほど、と思う。“たましい”をきたえる。すてきな“たましい”の存在を知る。子どもの本はその役割を果たせる、と言う。
 「子どもの目」を通してみた世界が表現されている文学が児童文学であり、絵本ではないか。透きとおった、まっすぐな子どもの目は“たましい”をしっかりと見る力を持つ、と河合隼雄は言う。
 ただ、ここで語る児童図書とは、子どもだけでなく大人もともに読める価値を保有しているものでなければならない。親と子で、ともに読んで、ともに語り合う。子どもの発想の豊かさに大人は驚かされ、子どもたちは“たましい”を活字や絵にしのばせ、感動的なモチーフを持つ作品の数々を次回から紹介していきたい、と思う。
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