ぼくの読み聞かせ教室



 イソップ、グリム、アンデルセンの童話で、講義のほとんどの時間を費やしてしまったが、これで一応童話の面白さや童話に接する際の問題点等の基本的な事柄を多少なりとも伝えることができたと思っている。

 次なる展開として、絵本を使って「世界の童話」「日本の童話」の読み聞かせに挑戦してみることにした。取り上げる童話は「子どもに語る世界昔ばなし」・「子どもに語る日本昔ばなし」(主婦と生活社)から数編ずつを選んだ。このシリーズはそれぞれ「たのしいお話」とか「こわいお話」とかに分類されており、国籍も示してあって、童話を選ぶのに大変重宝した。ただ、ダイジェスト版であるということから、すべての童話を一定のページ数に納めてあるので、文章表現に原作のような魅力が感じられないということと、挿絵もあまり魅力的でないということが問題で、講義の際には単行の絵本を探してきて使用することにした。結果的には、講義中の余談が多すぎたせいか、「世界の童話」までで時間切れとなってしまった。

 取り上げた絵本は、「大きなかぶ」「スーホの白い馬」「さんびきの山羊のがらがらどん」「いのちのランプ」「アリババと四十人の盗賊」「さるの王様」の6編である。事前に読み手を決めて、絵本のコピーを渡し、練習をさせたうえで、本番では絵本をめくりながら読ませた。よく練習していて、みんな心を込めて堂々と読み上げた。聞き手も真剣だった。将来立派な保育者になろうという意気込みさえ感じられてとてもうれしくなった。あれこれ悩みながら、一か八かでいろいろ挑戦してみたが、やってみてよかったと思った。

 事前に読み聞かせについての指示や注意は特にしなかったし、読み終わった後もほめ言葉以外に注意や批評は一切しなかった。事後の指導として、“絵本を複数の子どもたちに読んで聞かせる場合の留意点”を全員に書かせ、それを「読み聞かせのポイント4」としてプリントにまとめて配布した。大変よくできていたので、補足説明は「会話の部分の扱い」のみにとどめた。

 最後に少し残った時間で、林明子の「はじめてのおつかい」と「こんとあき」を紹介した。これまで童話や絵本とはあまり縁のなかった自分にとって、昨年8月徳山市美術館における林明子の原画との出会いは鮮烈であった。今回、短大で絵本や童話を扱うようになってから、不思議な“出会い”に支えられて、なんとかやってこられたことに運命的なものを感じる昨今である。

「絵本フォーラム」24号・2002.09.10

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