< 2012年度 第2回「絵本講師の会」交流会報告書 ( 2012/12/01)

 第2回「絵本講師の会」(はばたきの会)の交流会が、12月1日芦屋市民センターにおいて開催されました。
冷たい北風が吹く中、自宅からてくてくと歩いて交流会の会場に向かいました。たくさんの交流会のプログラムの中で今回は「絵本づくりについて他」ジェリー・マーティン氏と絵本講座「伝わっていますか? 人として生きる上で大切なこと」松本直美氏のお話について報告します。


「絵本づくりについて他」


英語講師のマーティン氏は、日本の子どもたちと英語でコミュニケーションをとるために、絵本を製作されました。その思いは、日本の英語教育は、受験の道具。小学6年生から高校3年生まで7年間も英語を勉強しているのにもかかわらず、英語でコミュニケーションをとることができません。大学に入学して始めて、コミュニケーションとしての英語に出合うのです。このお話を聞き、私は確かにと、首を大きくたてに振り納得しました。マーティン氏の生まれ故郷のカルフォルニアでは、2年間、他国の言葉を学べば、日常会話程度なら話せるようになるそうです。それが、言葉(英語)をコミュニケーションとして習うか、受験のために習うかの違いだといわれました。日本の教育は、子どもたちに、何を求め7年間も英語教育をするのでしょうか? とても疑問に感じました。言葉は、コミュニケーションの道具以外の何者でもないのでは? ならば、母国語(日本語)をしっかり教育し、母国語でのコミュニケーションがしっかりととれるようになってからの英語教育ではないでしょうか? 母国語で、自分の思いや、喜怒哀楽を伝えることができない日本の子どもたちの現状を、日本の政府は理解しているのでしょうか?
また、マーティン氏は、幼い頃から英語を習うと、幼ければ幼いほど、英語を覚え話せるようになります。しかし、その子どもは、幸せなのでしょうか? と問いかけていました。日本で生活する以上、コミュニケーションの大半は、日本語です。英語を話す子どもと、日本語を話す親や友だちとが、充分なコミュニケーションをとることができるのでしょうか? 私は、子どもにとって、相手に伝わらないことは、大きなストレスを感じていると思います。もっと母国語を大切にしませんか? 子どもに、思いが伝わらないストレスを、感じさせないように育てましょう。と多くのお母さんに伝えていきたいと思いました。


 絵本講座「伝わっていますか? 人として生きる上で大切なこと」

松本直美氏の絵本講座は、エピソードが多く、明確で心にストンと落ちるお話でした。
「園やおはなし会で絵本を聞くのと、親が読んであげるのとでは、同じ絵本でも、大きな違いがあります」というお話から始まりました。園やおはなし会では、1回だけしか読みません。大勢で見るので、絵がはっきりしたものや、大きな絵本になりがちです。子どもの気持ちと一致しないことも、よくあります。しかし親が子どもに読む場合は、何回も読んでもらえて、小さな絵の絵本でも楽しめます。子どもの気持ちで絵本を選び読むことができます。一冊の絵本を通して、親と子の共有体験ができます。親は、子どもの気持ちを何となくわかるようになります。この「何となく」がとても大事。言葉の本来の意味だけでんなく、裏側の意味(気持ち)を感じとることができるようになります。こんな親子関係が絵本を読むことで、育まれます。こんな親子関係を育むには、絵本は借りるのではなく、買う必要があります。いつでも家に絵本がないと、子どもの気持ちに添う絵本を、何回も読むことはできません。私は、松本直美氏が「何となく」とか「気持ちに添う」とか、少し曖?な言葉を使われても、きちんと思いが伝わってくる、上滑りをしない、言葉の重みを感じました。

次にメディアのお話になりました。テレビは、だんだん巨大化され、今では、幼い子どもの身長よりはるかに大きな画面になっています。これは、大人が毎日、映画館で生活しているようなもの。そんな状況に、どれだけの大人が、危機感を持っているのでしょうか?テレビ画面と同じ大きさの冊数分絵本を家庭にそろえてほしい。私も同感です。図書館やパソコンのせいなのか、本当に、絵本に限らず、本そのものが1冊もない家庭が多いと感じます。ゆっくりとした、行きつもどりつする子どものテンポに、メディアは合わせられますか? テレビを大型化すると、人間の肌のぬくもり、におい、空気感が伝わるのでしょうか? 幼いときにしか育まれない人としての感受性を育てる大事な時間を、メディアは、私たちから、奪っているのではないかと、感じています。
絵本1冊で伝わることは多くあります。理屈でいくらお話して理解されても、それは、「いい勉強になった」で終わります。しかし心に残るお話だと、行動につながります。行動につながると、周りが少しずつ変化していきます。幼い心に残ると、心の中に「思い」や頭の中に「言葉」がたまっていきます。絵本は信頼できるもの。親に読んでもらった時間分、愛情が向けられていると思います。そして、絵本は今の子どもたちに不足している実体験の時期や量を補ってくれます。絵本を読んで体験できることは、いっぱいあります。たとえば、暗闇、満天の星空、おじいちゃん、おばあちゃんの知恵や愛情の深さ。私は、持っている絵本の冊数分だけ、多くの体験ができるのではないかと思います。

松本直美氏は自分の思いをストレートに話され、一つ一つの言葉は歯切れよく、力強く、やさしさのあふれる講座でした。
私の頭の中で、分かっているけど、モヤモヤしていて明確な言葉が見つからず、伝わりきれていないと感じていた部分が、今回の2つのお話を聞き、スッキリと解消されました。(あだち・みつお)。    



報告・安達 光生(芦屋5期)



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