ほるぷフォーラム出版『絵本で子育て』に掲載されています。

子どもの悲鳴が聴こえますか

− 最終回 −
いま、私たちは…

 いま、子どもたちは悲鳴を上げています。大きな声で〈声にならない悲鳴〉を上げ続けているのです。その悲鳴が聴こえますか?
 「私の子どもは悲鳴なんて上げていません」「少なくとも私の子どもは大丈夫だわ」
 そう考えているかぎり、子どもが悲鳴を上げていても、その声が耳に届くことはないでしょう。まず、「聴いてあげよう」という態度、意識をもってほしいのです。
 もちろん、すぐには聴こえないかもしれません。しかし、子どもにとって本当に大切なものとは何かということを考え続けていれば、いつかきっと、かすかに聴こえてくるはずです。そして、そのとき、私たちは子どもたちの心と本当に正面から向き合え、子どもたちを歪みのなかから救ってあげることができるのです。
 子どもを愛することができない親…。親を愛することのできない子ども…。親と子の会話がなくなってしまった家庭…。親と子の心のふれあいがなくなってしまった家庭…。とても悲しいことですが、こういう親子、家庭が存在することは事実であり、現在、その数を増やしつつあります。
 そういう家庭に育った子どもたちは、自分が子どもをもったとき、自分が育てられたのと同じ感覚で子育てをすることでしょう。そして、同じような子どもがまた生まれ、再び悲鳴を上げ始めるのです。
 いま、この悪循環を断ち切らなければなりません。そうしなければ、社会の歪みはどんどん大きくなり続け、いつかとりかえしのつかないことになってしまうでしょう。
 それは決して難しいことではありません。私たち一人ひとりが、愛情をもって子どもたちを育ててあげる。たったそれだけのことなのです。
 子育てで大事なのは、子どもが親から「愛されている」と感じることです。その日の楽しかった事件を真剣に聞いてもらえたこと、いっしょに公園で遊んだこと、絵本を読んでいっしょに泣いたり笑ったりしたこと…。そんな何気ない日常のひとこまひとこまが、キラキラと輝く愛情のかけらとなって、子どもの心に降り積もっていきます。
 そして、そのかけらはいつか、決して壊れることのない強い結晶となり、子どもの心を愛情で満たすのです。そうして得た強い力によって、子どもたちは自分の人生をしっかりと歩いていくことができるのです。
 人は、子どもを生んだだけでは〈親〉にはなれません。子どもを育てて初めて〈親〉となるのです。その〈育てる〉ということをもう一度、見つめ直してほしいのです。現代社会の〈当たり前〉に流されることなく、本当に愛情あふれる子育てとは何かということを、いま、改めて考えてみてほしいのです。
 それが、現代社会に生きる子どもたちのために、将来を生きていく子どもたちのために、私たちが果たさなければならない責務なのではないでしょうか。

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