絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」95号・2014.07.10

『絵本講師・養成講座』を受講して
—— 絵本の力は生きる力の源 ——

楠戸 磨紀(芦屋10期)

絵本講師 楠戸 磨紀 昨年から今年にかけての一年間は、私にとってひとつ年を重ねただけではない特別な一年となりました。確かにひとつ年を重ね目尻にしわが!?増えています。でも、沢山の絵本や人との出会いから自ら学び吸収した心は目に見えないけれども大きく豊かに成長したことを実感しています。一年間頑張った自分に自信をもち、背筋を伸ばして修了証書を手にすることができました。 昨年から今年にかけての一年間は、私にとってひとつ年を重ねただけではない特別な一年となりました。確かにひとつ年を重ね目尻にしわが!?増えています。でも、沢山の絵本や人との出会いから自ら学び吸収した心は目に見えないけれども大きく豊かに成長したことを実感しています。一年間頑張った自分に自信をもち、背筋を伸ばして修了証書を手にすることができました。
 私の受講した一年間を一冊の絵本でたとえるなら、『おおきな きが ほしい』(文/佐藤さとる、絵/村上勉、偕成社)です。この絵本は私が小さい時から大好きな一冊。そして我が子2人とも(兄弟)同じように好きで、親子だなあとしみじみと感じたものです。世代を越えて親しまれるこの絵本は、2回の成人式を迎えているロングセラーです。子どもの頃に誰しもが本当にこんなこと出来たらいいな、と絵本のなかの男の子と自分を重ねあわせたくなります。男の子が大きな木を育て、はしごをかけて枝に小屋をつくり小鳥やリスが遊びに来たりします。春夏秋冬をどんな風に過ごすのか想像しながらドキドキ、ワクワクする気持ちは絵本のなかの一員になります。
 私は「絵本講師・養成講座」の扉を開き、絵本の種を頂き大切に心のなかに蒔きました。私の種を大きく育てたいという気持ちは、受講を重ねる度に強くなりました。普段の生活では出会えない素晴らしい講師の方々の講演には、感情が高ぶり涙あふれることも多くありました。素敵な言葉のプレゼントを頂き、それは心の支えとなりました。そんな心のこもった栄養を種にふりそそぎ、水を与えると少しずつ種は芽を出し根をはりました。グループワークでは仕事も様々、世代も様々なメンバーの方々からたくさんの刺激を受けました。いろいろな情報は私に活力を与えてくれ、私のなかで芽はのび枝となり四方に広がり、太陽の光を吸収して空に向かってのびていきました。そして大きな木になりました。
 私は沢山の出会いを通して、ともに学んだ事を自分なりに受け止めかみくだき考えました。私の心のなかの木を育てるように、きっと子どもたちも自分の心のなかに自分にしかないかけがえのない木を育てているのでしょう。木はあふれんばかりの愛情を感じ、受け止め、しっかりとした土台をつくり成長していくのでしょう。成長していく過程は人それぞれでしょうが、ひとつひとつ積み重ねていくことで土台は崩れにくい力強い根をはると思います。時には辛い事、悲しい事が嵐や大雨のように訪れます。木の枝は折れてしまうこともあるでしょう。枝は折れたとしても土台がしっかりとしていれば、またのびようと自らの力を出します。そこには心のこもった沢山の栄養(愛情)があふれているからだと思います。時には早く大きく花を咲かせたいという大人の子どもへの焦りやプレッシャー、要求から愛情の欠けた栄養を与えすぎ、子どもたちの心を追い込んでいないか心配になります。土台がしっかりしていなければ、根がくさり木は崩れ育たないからです。
 葉のゆれる音、花の香り、小鳥のさえずり、四季の変化を肌で感じ、五感を使い心で感じる事から遠ざかっている今、私たち大人に出来る事は何でしょうか。子どもの成長を願うばかりに大人は子どもたちを急がせていないか。結果や評価で子どもの良さを決めていないか。変わりゆく社会や環境のせいにして何か一番大切なものを忘れてしまっていないか。身近にある絵本を手にして親子で肌をよせあい絵本を読みます。子どもには、大好きな人の声や家族のぬくもり、無償の愛を伝えたい。
 ひとつひとつの愛の積み重ねが心の土台となり、しっかりとした根となるはずです。木は芽を出し、枝をいっぱいのばし、春には花を咲かせ、実をつけることでしょう。それは、愛の種となり身近な人につながっていくと信じています。子どもたちにはしっかりとした土台がある木になるように、私は愛をこめて伝えていきたいと思います。
 絵本の力は人が人として生きていく力の源であることを確信して……。
(くすど・まき)


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