私の絵本体験記

「絵本フォーラム」91号(2013年11.10)より
絵本のパワーを信じて……
楠戸 磨紀さん(兵庫県宝塚市)


 一冊の絵本から気持ちが高ぶり感情がこみあげ、涙あふれた自分を時々振り返ります。保育士の仕事をしながら、上の子が3歳の時に2人目の子を授かりました。とても幸せでしたが現実は、育児、家事、仕事と目まぐるしい日々でした。
 
産休に入る前に同僚から、長谷川義史さんの『おへそのあな』の絵本を頂きました。電車待ちのホームで思わず開いてみると、最後のページでは涙があふれ、お腹をなでながら「ありがとう」と言っていました。お腹に小さな生命が芽生えた時から一緒に過ごした時間は、母があかちゃんを思うと同時に、お腹の中からあかちゃんも母を家族を見つめてきたことに胸いっぱいになりました。家族に愛され待ち望んできたあかちゃん、家族の愛を感じ誕生する喜びを感じていたあかちゃん。時間と共に、成長と共に、忘れかけていく生命が誕生する時の感動。この絵本を手に取ると、生命の大切さと日々の時間の幸せを実感させてくれるのです。
 上の子は10歳、下の子は6歳になりましたが、毎日のように就寝前に読み聞かせをしています。今、子どもたちが絵本から感じていることと、5年、10年後はきっと違う感情が芽生えているでしょう。絵本を通して子どもと共感できる時間は私の宝物となり、子どもたちにとって心の片隅でパワー充電のように蓄えられ、その時の絵本、時間が何かの形で力となってくれたらと願っています。
 目には見えないパワーを信じて……。(くすど・まき)

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