絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」89号・2013.07.10

『絵本講師・養成講座』を受講して
—— 確信に変わった! 絵本の素晴らしさ  ——

中村 伸子(東京会場 9期生)

 

 私は幼い頃、絵本を読んでもらうことがとても好きでした。同じ本を、母、祖母、父と順番に続けて読んでもらっていたことを覚えています。大人になるにつれて、一時は絵本から遠ざかりましたが、子どもに恵まれてからは、昔を思いだし当然のように読み聞かせを始めました。
 読んでもらっていた絵本を見つけると懐かしくその当時の事を思い出します。部屋の様子や窓から見える桜、祖母の声まで……。絵本が時を繋いでくれていることを感じました。
 その後、学校図書館で仕事を始めたので、小・中学生への読み聞かせも経験することができました。クラス全員がじっと聞き入り、一斉に笑ったり、ため息をついたりするのです。反面、家庭環境から全く読み聞かせをしてもらわなかった子どもは、お話しの世界にスムーズに入れず、読み聞かせに集中することが出来ないということも体験し、「絵本」と「読み聞かせ」にずっと関わり続けたい、と思うようになりました。
 ところが、幼・小・中・高校の図書館全般へのアドバイスとサポートをするという仕事内容に変わってからは、やりがいを感じつつも、絵本に対する興味が薄れ絵本を手にしても、わくわくする感じが無いことに不安を抱きはじめていました。
 ちょうどその頃、幼稚園と保育園の保護者向けに「読み聞かせや絵本のすばらしさを、保護者と同じ目線で伝える」という講座を企画することになりました。
 そこで辿り着いたのがNPO法人「絵本で子育て」センターだったのです。絵本講師の北素子さん、中村利奈さんを紹介していただき講座をお願いしました。参加者から「共感できた」「子どもに本を読んであげようと思う」という感想が寄せられ、主催者としては大成功の講座となりました。
 私もお二人の話に惹かれ、素直にもう一度初心にかえって学びたいと思い始めたのです。
 しかし、一年間続けられるかという不安やレポートの課題があるというので迷い続けましたが、やっと第9期に申し込むことを決心したのです。
 いざ、講座が始まると、絵本のことを学ぶというわくわく感を感じることができました。本について自分で学んでいく、みんなで高めあっていくこの講座は、最近の私に欠けていた気持ちを思い出させてくれたのでした。
  講座の講師陣は多彩で、毎回聴講が楽しみだったことは言うまでもありません。絵本にあらゆる方向からスポットライト当てていただいたお陰で、絵本をいろいろな見方で捉えることができるようになりました。
 今までの自分の「絵本」についての知識は、様々な講座や本で得たバラバラなものでした。それを、絵本の歴史から始まり、絵本の種類、子どもの発達段階に応じた絵本選び、良い絵本について、読み聞かせの役割と方法、実践例などを系統的に学べたことは、私にとって大きな事でした。
 また、他の受講生と話をすることで、たくさん刺激を受けました。本に関わる環境、活動の場、受講の動機、目的などは様々だということに驚き、自分が知らない読み聞かせの世界もあるのだということを感じました。
 受講を終え「絵本の読み聞かせは良い」というぼんやりとした思いから、「絵本の読み聞かせは本当に素晴らしいのだ」という確信に変わりました。大人の役目として、確信をもって子どもを絵本と出会わせ、読み聞かせを続けていきたいと思います。
                                   (なかむら・のぶこ)

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