私の絵本体験記

「絵本フォーラム」86号(2013年01.10)より
絵本で娘と思いを共有する
 栗本 優香さん(兵庫県宝塚市)

 『ちいさいみちこちゃん』(なかがわりえこ/さく、やまわきゆりこ/え、福音館書店)を手にした時、思わず「娘そっくり」だと笑みがこぼれた。
 みちこちゃんも娘も同じ3歳。どちらも幼稚園入園を心待ちにしている。ところが、みちこちゃんの方はもう待ちきれなくって、ひとりで幼稚園へ……。「わたしのおもちゃであそべばいいでしょう」と強気な様子は3歳ならではで、娘を彷彿とさせる。
 一方娘は「どうして、私はまだ幼稚園に行けないの!?」と憤懣やるかたない。というのも、毎日のように遊んでいたご近所の友だちが皆、幼稚園に行ってしまったのだ。春頃は「私も行きたーい!」と泣き叫ぶ娘の声が、朝のご近所中に響きわたり、それをなだめるのも一苦労の毎日だった。
 そんな状況だったので、早速娘に読んでみるものの反応が薄い。結局みちこちゃんも、(自分も)春まで入園はまだなんじゃない!といったところだろうか。そんなことを考えていると、ふと思い出した。私も幼い頃、入園を楽しみにして、祖母と共に幼稚園を見に行き、自信満々に「来年からよろしくね」と園児に挨拶までして帰ったのだ。心待ちにする私を、きっと家族がほほえましく見守ってくれていたのだ、と親になって改めて思う。絵本が娘の気持ちと、幼き日の自分を見事に重ねてくれた。 今になってやっと娘の気持ちに寄り添ってやれる気がする。入園を控えて、娘の所作に色々と口出しする新米母の私。反省する度に絵本に手が伸びる。そして「娘なら大丈夫」と自分に言い聞かせる。私にとって、もうしばらく手放せない一冊になりそうだ。(くりもと・ゆうか)

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