こども歳時記

〜絵本フォーラム84号(2012年09.10)より〜

読書の秋に寄せて、子ども達と共に

 今年度、息子達の小学校の図書ボランティアの参加を申し出た。それは息子達に「学校の授業で何が一番好きなの?」と聞いたところ、「図書の時間!」という返事があったのがきっかけだ。
 学校の図書室って? との興味もあったし、ようやく末っ子も幼稚園に入り時間も捻出できるようにもなった。それに何より少しでも我が息子達をはじめ、子ども達が本を楽しむお手伝いが出来たら…という思いからだった。
 活動内容は、書架の整理と破損した本の修理、季節に合わせた図書室の装飾や本のピックアップ、そして低学年の子ども達への読み聞かせ。読み聞かせは図書室だけではなく、各学年各クラスでも、週に一度朝の時間にも行われている。長男(4年生)の子育てのなかで読み聞かせは経験を経て来たはずだったが、やはりさまざまな個性が入り乱れる学校での読み聞かせは、家庭でするそれとは違うことに戸惑いもある。一年生の反応は、とても素直というか正直だ。長過ぎても飽きてしまうし、説教じみた話でも落ち着きがなくなる。先日、ちょっとまじめな内容の絵本を読み聞かせした。女の子たちの興味津々な姿勢に対して、一部男の子たちにちゃちゃを入れられた。しかし、帰りに呼び止められて「朝はふざけてごめんなさあい」というところは、まだまだ素直な一年生と、ちょっと安心、思わず微笑んでしまった。
 そんな図書ボランティアの日常に出くわして思い出したのは、『としょかんライオン』(ミシェル・ヌードセン/さく、ケビン・ホークス/え、福本友美子/やく、岩崎書店)。
 ある日突然、ライオンが図書館にやってくる。ライオンは読み聞かせの時間をいたく気に入って、熱心に聞き入るが読み聞かせが終わってしまうことに不満を抱いて吠え立てる。メリーウェザー図書館長にたしなめられ退去を命じられるも、シュンとしょげこんだライオンに一緒に聞いていた女の子の救いの手が。「しずかにするってやくそくすれば、あしたもきていいんでしょ?」ライオンは足しげく図書館に通い、図書館や館長のお手伝いをしながら、読み聞かせの時間を楽しみ、館長にとっても、図書館にくる子ども達にとってもなくてはならない存在に。でも、ある時メリーウェザー館長に一大事が!
 先日、季節の絵本を紹介する図書館主催の絵本講座で、「学校での読み聞かせを始めたのだが何を読んでいいのか迷う」という質問が出た。それに対して子育てを一通り終えたというある女性が、「お母さんが来てくれるのがうれしいの! 読みに来てくれるだけでいいのよ」ということばが印象的だった。「まずは自分の好きな絵本を持って行き、自信を持って読んであげることよ」
 素直なライオンに子ども達の心を垣間見ると共に、メリーウェザー館長とライオンの間に築かれた絆に、家庭での親子の絆を作るという読み聞かせの原点を思い起こさせる。秋の気配を感じ始めたこの季節、読書の秋を子ども達とともに楽しみ、ここでもまたその原点を生かした活動が始められたらと思う。

佐藤 ひろみ(さとう・ひろみ)


『としょかんライオン』
(岩崎書店)


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