えほん育児日記

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~絵本フォーラム第83号(2012年07.10)より~  Vol.1

う〜ん。言うは易く行うは難し……。

 いよいよ夏、暑い夏です。この季節になると家の前の道に水撒きするのが日課です。アスファルトからジュワっという音が聞こえてきます。その気化熱で少しでも涼しくなればいいなと思っていたら、お隣三軒までホースを伸ばして水を撒き散らしています。
  夕方の水撒きは子どもたちの遊びで、綺麗な虹が浮かび上がると兄弟でびしょ濡れになりながら、その虹を何とか潜ろうとしています。一枚脱ぎ二枚脱ぎ、とうとうパンツ一枚になり走り回っている息子たち。

 家の向かいにある織物の美術館は閉館時間になります。暖簾を片付けに出てきた職員の方と息子たちは、「こんにちは!」「今日は!」との夕方のご挨拶。「暑いから涼しくなるわ」、と言われて、息子たちは俄然張り切ります。
 「水撒く!」「ぼくが先!」とホースの奪い合い。もうこれ以上は水の無駄遣いと強制終了。そのままお風呂へ直行。夏のそういう夕方は本当に慌ただしく、でもとても幸せな時間です。

              *   *   *

 絵本講師になり6年目。二人の息子は小学一年生と幼稚園の年中組になりました。日々の子育てと絵本との関わり、自己のあり方、絵本講師としての思いなど書けたら、と思っております。
 長男の性格は少し神経質で泣き虫。融通は利かないが、社交性はあり正義感の強い心の優しい運動大好きな子です。次男は天の邪鬼。二番煎じは大嫌い、緊張しやすく(緊張の目安=洋服の左わき下にあるタグを触る癖がある)、でも人懐っこくひょうきんで甘えん坊の平和主義者。
 長男が8カ月の時、第3期「絵本講師・養成講座」に通い始めました。絵本は好きだけれど息子に何を読んであげるのがいいのか、と悩んでいた私にとって養成講座で学ぶことすべてが新鮮で納得できました。様々な自分の思いが湧き出し、学べたことへ感謝するばかりでした。
 幼い時、絵本をあまり読んでこなかったという夫は、絵本を手にとっては子どもと心底楽しみ、今では「絵本がなかったら、どういう子育てになっていたのだろう」とつぶやくほどです。
 絵本のある空間を作ろうと、子どもが生まれる時から少しずつ増やしてきた絵本も気づけば1000冊ほど。我が家に来る人は、みな絵本を手に取って懐かしんだりしています。
 普段は読まないという子も「これ読んで!」と群がります。次男が生まれる頃には「物の絵本」から「生活絵本」や、簡単な「物語絵本」を楽しんでいました。

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 ともに幼稚園に通い出すころには、お風呂に入るとシャワーヘッドをマイクにして「うりうりうりうりおーいえい!」『わにわにのおふろ』。ふたりが公園でかけっこする時の合図は「よーいどんけついっとうしょう」で走り出します。
 毎日とにかく競い合い・喧嘩・仲直りの繰り返し。兄弟とは面白いものです。一つのものがあれば必ず取り合います。一粒のブドウの飴をこんなにも必死で取り合うのかと感心するくらいに。ならばじゃんけんでと提案したら、ますます場を激しくさせてしまいます。三回勝負だのやれ後出しだのと……。
 新聞を取ってきて、とお手伝いを頼むと二階のリビングから階段を駆け下り玄関に出て郵便受けまでは二人は足の引っ張り合い。新聞争奪戦なのです。西宮神社の福男さながら……。僕が先に、いや僕が先! と。郵便受けの高さまでは身長が足りない次男は負けて大泣きという結果に。
 兄のすることをしかと観察し一緒になって同じようにする次男。兄が工作をし始めたら工作、表でサッカーをし始めたらサッカー、読書し始めたら読書といった具合に。兄を崇拝し言動・行動を金科玉条としている様子は見ていて本当に面白いのです。
 月曜日から日曜日、朝から晩まで子どもたちの体力は衰えることがありません。なんとか就寝時間にまで持ち込んで一日のしめとなります。枕元にはそれぞれが選んだ絵本を読んでほしい順番に置いてあります。時に読みたいものが重なると、またもや争奪戦がお布団というリングで行われ、私の怒りはピークに。「寝る時間なのだからいいかげんにしなさい!」。
 しゅんとなった二人を抱え、夜の絵本の時間は続きます。ぴたりと穏やかな空気になり「お母さん読んで」といってくれる、それが嬉しくてかわいくてやめられない日課でもあります。

              *   *   *

 絵本を読むことで子どもと一体感を感じ、それを分かち合う。そして、全てを受け入れるこの時間、この心の状態が私の子育てを支えてくれています。
 兄は弟の手を握り、弟は兄に寄り添い、すやすやと眠りにつく姿を見て、読み終わった絵本を本棚に片付けながら余韻に浸り、一日の私の反省の時間です。あー今日もまた怒ってしまった。イライラしていたなあ。干渉しすぎたかな、明日はゆっくり見守ろう、丸ごと受け入れようと一日の自分の心を見直すのです。
 うーん。言うは易く行うは難し……。

                           (かとう・みほ)

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