こども歳時記

〜絵本フォーラム79号(2011年11.10)より〜

子ども時間を満喫し 体験すること

 秋も深まり、陽だまりが恋しい季節になってきましたね。そんな中、小2の息子の外遊びに付き合う日々が続いています。原因は2歳の娘。兄が出て行くと一緒に行くと騒ぐので、夕飯の準備に後ろ髪を引かれつつ、やむなく上着をはおり外へ駆け出て行く日々。おかげですっかり小学生の遊びにも詳しくなりました。懐かしいものでは缶けり、鬼ごっこ、ケイドロ。私の知らない遊びでは「ぽこぺん」なんていうものも。

 見るとはなしに見ていると、小学生の友達付き合いの面白さに気付きます。仕切る子、おふざけが過ぎる子、鬼になるのを嫌がる子など皆、自由で個性的。もめごともしょっちゅうです。ある時は一人の子を皆で責め立てていました。見かねて声をかけようと口をひらきかけたとき「ケンカにならない遊びをしようぜ」と一人が言い出し、ああだこうだと相談、ほどなく別の遊びが始まりました。……子どもってすごい。友達関係から学ぶことのなんと多いことでしょう。「子どもは遊びの中から学んでいく」とはよく耳にしますが、そこには『友達』という存在が必要不可欠なのだと、目の当たりにする日々を送っています。

 『ともだち』(谷川俊太郎/文、和田誠/絵、玉川大学出版部)という絵本があります。《ともだちって かぜがうつっても へいきだって いってくれるひと。》《ひとりでは つまらないことも ふたりで やれば おもしろい。》などと納得の事柄から、《しかられた ともだちは どんなきもちかな。》《なかまはずれに されたら どんなきもちかな。》など考えさせてくれる内容に進み、最後には同じ地球に暮らす会った事のない子どもにも思いを及ばせてくれます。最後の詩と、「ともだちって すばらしい」の言葉に心から共感できます。

 絵本に出てくる貧困の問題から、経済のこと、温暖化のこと、何より放射能のこと……日本にも世界にも様々な問題があふれている現代です。自分たちが何かをすることはもちろんですが、こんなに柔軟に気持ちを変化させ、遊びを発展させていけるこの子ども達に、未来を託さずにはいられません。

 言語聴覚士の湯汲英史さんの著書の中に《子どもは人として完成された形で生まれてきません。まわりの人や物と関わる中で、少しずつ発達していきます。》とあります。そして育つことの究極の目的は「自分で考え、そして判断し、行動できるようになること」だそうです。まわりの人と関わること、とりわけ「ともだち」とかかわることで、子ども達はどれだけ発達=成長していくのか。子ども達がたっぷりと子ども時間を満喫し、その中でたくさんの体験をすること。それをサポートすることが大人の役割なのだ、と今強く感じています。

 さて、プレゼントに頭を悩ませる季節がまたやってきます。子どものリクエストと、子を想う親やサンタクロースとの気持ちの間のズレ……今年はどう埋めていこうか。この『ともだち』を子どもと読みながら、ゆっくりと考えたいと思います。

中村利奈(なかむら・りな)


『ともだち』
(玉川大学出版部)


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