私の絵本体験記

「絵本フォーラム」77号(2011年09.10)より
「ママとあそぼう」
田中 潤さん(埼玉県川越市


 私が絵本に興味を持ち始めたのは大学生の頃。数枚の絵とわずかな文章でしかないのに、そのたった一冊がずしりと重く残ったりして。 これは何やらすごいものだと感じたのです。

  しかもまわりはそんな良いものの存在に気付いていないような気がして、私が見つけたとっておきの宝物のように思えました。心に伝わってくるものの暖かさ、訴えかけられる正義などから、本質的なものに気付いたり、心が清められたり、考えさせられたり。たとえば有機野菜を使ったご馳走をいただいている時のような、なんとも贅沢で健康的で、そして心にも体にもじんわり効いているような気がするのです。

  そんな私が母になり、早 3 年。息子が 2 歳になった頃に「絵本講師・養成講座」を知り、勢いで受講を決めましたが、そこからようやく始まった親子の幸せな絵本時間は、ぜひこれから子育てする人に教えてあげたいと思うほど素敵な時間でした。

  夜寝る前のひととき、ベッドの上でオレンジ色の灯りに照らさせながら、寄り添って絵本を読む。まだおしゃべりもろくにできなかった息子と、笑いあい、どれほどの言葉を二人で楽しんだことか。ともに向き合い、目の前で刻々と成長している姿を見られることに喜ぶ。絵本がなければ知らずに通り過ぎていたかもしれません。

  まだあどけない息子にとって、絵本を見るということは私と遊ぶこと。「ママあそぼう」とまっすぐ求めてきてくれる手をしっかり握れる親でありたい。しばらくして私が職場復帰したため、息子との時間は本当に夜寝る前のわずかな時間しかなくなってしまったけれど、大切なことを伝え続けていきたいから、たとえ夜遅くなってしまった日でも、ゆっくりと絵本を二人で楽しんでいます。(たなか・じゅん)

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