私の絵本体験記

「絵本フォーラム」74号(2011年01.10)より
親と子、共通の絵本体験
長澤 聖子さん(兵庫県神戸市)


 我が家の2人の子どもたちとは、今まで本当にたくさんの絵本の世界を楽しんで来た。ひとたびページをめくれば、私も子どもたちも一瞬で現実世界を忘れ、絵本の世界に突入。毎日眠る前は、どっぷりと絵本の世界につかる、幸せな時間を2人が幼い頃から過ごして来た。

 時が過ぎるのはあっという間。我が子たちは小学生になった。年々どんどん忙しくなる。親よりも友達といる時間が増えてくる。学校、宿題、遊び、お稽古、ご飯を食べてお風呂に入ったら、もう寝る時間・・・と、毎日があっという間に過ぎて行く。私も、早く、早くと子どもを急き立てることが増え、時間に追われ、気づけば一日が終わっている・・・。

子どもを膝に乗せて、お互いのぬくもりを感じながら、共にゆったりと心ゆくまで絵本を楽しめた数年前が懐かしく、寂しく思うこともしばしば。先日、そんな思いをぽろっと7歳の息子にこぼしたところ、「『おおきくなるっていうことは』そういうことなんじゃない?」と一言。聞きなれたフレーズ!よく2人で読んだあの本だ!いいこと言うね!とニヤリ。2人で顔を見合わせまたニヤリ。1冊の絵本によってお互い共通の回路がしっかりできていたことを実感。子どもたちが大きくなっても、幼い頃から親子で一緒に楽しんだ絵本の共通体験はきっと、お互いの心に積み重なっていて、いつか親子の温かい思い出として今日のようにふと湧き出すときが来ることだろう、と確信した出来事だった。これからも慌ただしい毎日の中でも「ほんのひと時」を捻出し、絵本の世界を子どもとともにできる限り楽しんで、親子の共通回路を増やして行きたいと強く思う。(ながさわ・さとこ)

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