リレー

表現する「言葉」の力
(兵庫・絵本講師/井下 陽子)

 やっぱり『ぽぽんぴぽんぽん』は持って行こう、又おへそを触りながら見る子がいるかな。インフルエンザ休室があって、久しぶりなので、私、そわそわしています。

 そろそろ2年になりますが、子育て支援教室に絵本を持って遊びに行っています。月に一度の大事な大好きな仕事です。始めはお母さん達ともスムーズに話せず、伝えたいことはミニ本にして配ったり、子どもたちが喜ぶ親子遊びを多くしたり、試行錯誤の日々でしたが、今では皆さんと仲良くなり、踏み込んだ話も出来るようになりました。

 小さな赤ちゃんだった彼が、立ち、微笑み、歩き出し、先日とうとうおしゃべりしてくれました。笑ったり怒ったりしていた頃の声と、今自ら話すために出す声が違うのに驚きました。いつも絵本をじっくり見つめてくれた彼、家でも沢山読んで貰うからか、単語ではあるけれどはっきりした発音で、次々言葉が出てくるようです。これから彼は、この「言葉」で沢山の事を考え、周りの人々と会話するのでしょう。見続けていたいものです。

 折しも、先日の朝日新聞に小中高校生の暴力記事があり、彼らが深く考えられないこと、表現する言葉の幅が狭くなっていることが書かれていて、再び「言葉」を考える機会となりました。私は絵本講座で「親子で絵本を沢山読んでいるとオマケで子どもに言葉の力が付きますよ」と言っていましたが、オマケと言うにはあまりに大きい言葉の力です。次から絵本を沢山読んで言葉の力を付けましょうとすべきか……小さな彼から教えて貰って、まだまだ修業が続く絵本講師生活です。

絵本フォーラム68号(2010年01.10)より

前へ ★ 次へ