リレー

子どもたちと幸せなひとときを
(福岡・元保育士、元幼稚園教諭 /浦塘 直実)

 絵本は〈子どもと大人をつなぐ心の架け橋〉だと心底思っています。それは、一冊の絵本『めっきらもっきらどおんどん』(長谷川摂子/文、ふりやなな/画、福音館書店)によって、子どもたちと心を通わせたエピソードがあるからです。それは、保育士をしていたときの頃の出来事でした。

 当時、私は未満児クラスの担任でしたが、 4歳児の担任が病気の為入院することになり急遽代替の担任になりました。時は1ヶ月半後に〈生活発表会〉を控えていました。それまでに、何度かこのクラスを訪れることがあり、その度に数冊の絵本を読んであげていました。いつも楽しく見てくれて、絵本が大好きな子どもたちで、しかも集中力と団結力のある元気でやんちゃなこのクラスを見込んで〈劇あそび〉にこの絵本を選びました。早速台本に起こして、子どもたちに提案してみました。数多くの絵本の中でも特に魅了した絵本だったので、勿論大賛成で練習も楽しく進みました。しかし、このままそっくり劇にすることは難しい面もあります。そんな時は、子どもたちと話し合いをして委ねました。子どもは、時には大人が思いつかないような発想をします。そんな積み重ねが、私と子どもたちとを一体にしました。発表会は大成功! 多くの方から「この劇は面白かった!」と絶賛されました。

 私のこの貴重な経験は、後の保育にとても大きな力となりました。そして、益々絵本の持つ力と子どもたちに伝えていく大切さを感じながら保育の中に絵本の重要さを位置づけました。

 保育現場では、まだまだ絵本の素晴らしさを感じる機会のない保育者がいることが現状です。私の願いは、一人でも多くの保育者が絵本を通じて、子どもたちと幸せなひとときを分かち合って欲しいということです。

絵本フォーラム66号(2009年07.10)より

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