私の絵本体験記
「絵本フォーラム」59号(2008年07.10)より
「読み聞かせの中で自然に学び取ってくれる」
田所 浩美さん (兵庫県西宮市)

 私は幼いころ、たくさんの絵本に囲まれ、母に読み聞かせをしてもらって過ごしてきました。そんな体験から私は、子育ての早い段階から絵本の必要性を感じていました。今でも寝る前のほんのひと時、母の読み方・声の調子が脳裡に甦ってきます。これは何十年経っても心地いい感覚です。

 長女が 1歳の頃から色々な絵本を読み聞かせしてきました。3歳違いの長男も生まれ、読み聞かせの相手は2人に。ところが、障害のある次男を出産した頃には、私の心の余裕もなくなり毎日の読み聞かせもいつの間にか出来なくなっていました。

 そんな時、長女が通う幼稚園のお母さん友達から『かみさまからのおくりもの』 (ひぐちみちこ/作、こぐま社) という絵本をプレゼントされたのです。いただいた本を久しぶりに読み聞かせながら、その方が伝えようとしてくださった思いを感じ、いつのまにか涙が溢れていました。

 生きていく上で本当に大切なことは、決して言い聞かせて教えられるものではありません。しかし、子どもは絵本の読み聞かせの中で自分自身が自然に学び取ってくれるであろうし、たくさん読んであげている間に考え方や生き方に響く 1冊に必ず出会うであろうと思いました。何よりも子ども達の笑顔にやはり私自身も喜びを感じることができました。

  読み聞かせを再開して私自身も子ども達も心の余裕を取り戻せたと思っています。選ぶ本はいつも同じ本。同じ場面で悲しい顔。また、同じところで毎回笑って・・・。

  あれから7年・・・。寝る前の絵本タイムはあいかわらず続いています。次男に読み聞かせする声に寄せられて、自分で読んでいる本を片手に長女と長男が寄ってきます。急いでいる時など少し端折って読んだりしたら、「違うよ!とばしているよ」と注意されて・・。

  現在、学校で沢山の子ども達に読み聞かせのボランティアをしています。もっと沢山の子ども達、そして大人にも絵本の素晴らしさを知っていただきたいと思います。

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